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(前回から続く)

駐車誤差の問題を解決しようと必死に取り組むトヨタ自動車の開発チーム。
2003年を迎えて事態はさらに深刻化する。
製品企画グループによる評価は「商品性が全くない」だった。
駐車支援システムの設定を終えるまで1分近くもかかるからだ。
この設定時間を短くできなければ,商品化への道は閉ざされてしまう。
新型「プリウス」の発売まで残された時間はあとわずか。
開発チームの面々は,開発当初に考えていた「あの手を使うしかない」と思い極める。

インテリジェントパーキングアシスト(IPA)の開発責任者の里中久志氏。
インテリジェントパーキングアシスト(IPA)の開発責任者の里中久志氏。(写真:早川俊昭)

 「里中さん,もう時間がありません。とにかくアレを提案するしか手はないですよ」
 「うーん,そうだなぁ。でも…」

 2003年初め,製品企画グループから「このままでは商品化できない」とレッテルを張られた駐車支援システム。その解決策として,開発チームは数十秒かかっている設定時間を何とか13秒以内にできないかと方策を練っていた。だが,新型「プリウス」の発売まで残すところ半年ばかり。開発チームの面々は,もうあの手に頼るしかなさそうだと思い始めていた。

 ところが,開発責任者の里中久志はそのことに躊躇ちゅうちょしていた。あの手とは,駐車する前に必ず,自分が駐車したい駐車枠のほぼ真横で車両を一旦停止してもらうというもの。こうすることで,車速がゼロになった位置をECUに1度認識させる。そして,そこから再び車両を駐車枠の斜め前方まで前進させ,再度車両を止めて変速機のシフトをリバースに入れるのだ。その地点は,最初に車両を止めた位置からの移動距離とステアリングの操舵角の量から正確に割り出せる。

 この2度目の停車位置が正確に分かれば,実際の駐車枠がどこにあるのかもより正確に推定でき,画面上に表示する目標位置の枠と実際の駐車枠とのずれを少なくできる。ユーザーからすれば,画面上で目標位置の枠を動かす量が減り,設定にかかる時間を短くできる。従来も回転角センサや操舵角から駐車枠の位置を推測していたが,運転者によって駐車する位置までの走行方法がかなり異なるため,正確な駐車枠の位置が分からなかった。

 開発当初から駐車枠の前で車両をまず一旦停止する案はあったのだが,運転者にクルマを2度止めてもらう必要が生じるため,煩わしいとしてお蔵入りになっていたのだ。

 「ここまできては,もうこの手を使うしか道はなさそうだ」

 里中も最終的には腹を決め,新型プリウスの開発責任者に相談しにいくことを決める。駐車枠の前で一旦停止するかどうかは商品性にかかわる大きな問題。最終決定は新型プリウスの開発責任者に下してもらう必要があるのだ。