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照明市場の1~2割が有機ELに?

 こうした特性向上とコスト低減によって,有機EL照明は大きな市場規模が期待されている。もともと照明事業の市場規模は世界全体で6兆~12兆円,日本だけでも約8500億~1兆円超と大きいので,その一部でも有機EL照明に置き換えられればインパクトは大きい。例えば,調査会社の富士経済は有機EL照明の日本国内の市場規模が2011年に100億円を超え,白熱電球の市場規模を超えるとみる。世界市場では,2015年に5000億円以上,2020年に1.4兆円という試算が発表されている(図3)。これはあと10年余りで,照明市場全体の1~2割を有機EL照明が占めることを意味する。

図3 有機EL照明の市場予測。各調査機関の予測データをまとめたもの
図3 有機EL照明の市場予測。各調査機関の予測データをまとめたもの
(大久保聡,野澤哲生,「新概念の電子デバイスを創造するプリンタブル・エレクトロニクス」,『有機エレクトロニクス2010-2015』,p.70より)

 このように市場規模の面でも期待が高まっている有機EL照明であるが,そもそも照明として機能するのはなぜなのか。材料構成から見ていこう。

 有機ELデバイスの一般的な構成は,透明ガラス基板上に,透明電極からなる陽極,ホール輸送層,発光層,電子輸送層,陰極が積層され,さらに封止材料で封止したものである。電極間に電圧を印加することによって,陰極からホール輸送層にホールが,陰極から電子輸送層に電子が注入され,ホールと電子が発光層内で再結合して発光する。

 有機ELでは,発光層が有機材料であり,各機能層もアモルファスな膜で構成されるために,広範囲に均一な膜を形成でき,大面積なデバイスが作製可能である。このため,面全体を発光させることができる。これに対して,同じ次世代光源であるLEDは,バンドギャップが異なる無機材料の結晶が複数層積層された構造であるために欠陥が生じやすく,大面積で発光させることが難しい。このため点光源として利用されているのである。

 有機ELデバイスを構成する材料の中心となるのが発光層である有機半導体である。その有機半導体層の形成方法には,大別して蒸着法と印刷法があるが,現在の主流は蒸着法である。

印刷法の検討が活発化

 蒸着法の改良も進んでいるが,近年特に注目されるのが印刷法だ。さらなる大画面化と低コスト化が期待されている。一般的には発光層に高分子系の材料を使うことによって,印刷可能にする。これまではスピンコート法が使われることが多かったが,最近ではスリットコート法,スプレー法,インクジェット法,グラビア法,転写法など,より効率的に印刷できる手法が検討されている。中でも技術的な進歩が大きいのがスリットコート法で,100mm/sの塗布スピードで,膜厚50nm±5%という高い精度を出せる装置が開発されてきているという(菰田卓也,井出伸弘,「効率向上し『照明』分野へ期待高まる有機EL」,『有機エレクトロニクス2010-2015』,p.22)。

 パナソニック電工の菰田氏によると,今後の照明の方向としては,有機ELやLEDといった次世代の光源デバイスを使って,周辺の照明器具を革新して,総合的に省エネルギーを進めるようになると見る。例えば,赤外線焦電センサーを使って人を検知して照明をオン/オフしたり,周囲の明るさに合わせて最適な光量に制御するなどのシステムである(なお,菰田氏は7月1日に開催するセミナー『有機エレクトロニクス2010-2015~柔軟で印刷可能な次世代デバイス研究の最前線』で有機EL照明の開発動向について講演する)。