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チャンピオンデータの発表相次ぐ

 このため将来的には,現在太陽電池の主流であるシリコン系と同様のアプリケーションを目指して,特性や寿命を向上する取り組みが各研究機関で活発化している。

 特に近年目立つのが,有機薄膜太陽電池の変換効率でチャンピオンデータを達成したという発表が相次いでいることである。2007年7月には米California大学が「6.5%と世界最高のセル変換効率を達成した」と科学誌「Science」に発表した(Tech-On!関連記事3)。日本勢でも2009年2月に住友化学が,変換効率6.5%を得たことを明らかにしている(Tech-On!関連記事4)。

 また,東レはp型(ドナー)の有機半導体材料を新規に開発することで変換効率5.5%を達成した,と2009年3月に開催された春季応用物理学関係連合講演会で発表した(Tech-On!関連記事5)。このp型有機半導体材料のポイントは,(1)n型(アクセプタ)の有機半導体材料とのエネルギー準位(空間電位)の差を大きくしたことで約1Vの高い開放電圧を実現したこと,(2)n型半導体材料との分散混合液を塗布してpn接合を形成する際,単位体積当たりのpn接合界面の表面積を拡大できるようにしたこと,の二つだという(Tech-On!関連記事6)。同社は2015年ころまでに変換効率7%を目指すとしている。

 最近では,大日本印刷が2009年6月に,電気抵抗の大きな透明電極に補助電極をつけることでロスを低減し,有機薄膜太陽電池の5cm角のセルでエネルギー変換効率4%以上を達成したと発表した(Tech-On!関連記事7)。

第三の手法「塗布変換型」

 有機薄膜太陽電池は,材料・プロセスで分類すると,溶媒に不溶な低分子有機半導体を蒸着によって作製するものと,溶媒に可溶な高分子を塗布によって作製するものの二つに大別できる。前者は有機デバイスのメリットである印刷技術によるコスト面で不利であり,後者は溶媒に可溶にする材料選択面で制限がある。そこで,近年注目されているのが,溶媒に可溶な前駆体を使って,塗布後に加熱することによって半導体特性を持つ材料に構造変換する「塗布変換型」という手法である。

 例えば,三菱化学と「ERATO中村活性炭素クラスタープロジェクト」は共同で,p型有機半導体としてテトラベンゾポルフィリンを用い,n型半導体としてフラーレン誘導体を組み合わせた塗布変換型の有機薄膜太陽電池を開発した。テトラベンゾポルフィリンはその前駆体が溶媒に可溶でインク化でき,塗布後加熱することにより,半導体特性を有するものに構造変換する。現在,変換効率4.5%が得られているが,2010年度には10%,2015年度には15%を目指しているという(山岡弘明,「コスト低減と耐久性をもたらす新しい有機薄膜太陽電池」,『有機エレクトロニクス2010-2015』,p.31)。

 同研究グループによると,変換効率15%とするにはタンデム構造にする必要があるとみている。高分子塗布型では,タンデム構造に必要な積層構造をつくりこむことは難しいが,塗布変換型ならば塗布後に加熱することによって溶媒に不溶な層にすることができるので,積層構造が可能であり,タンデム構造が可能な点もメリットだとしている(なお,三菱化学の山岡氏は7月1日に開催するセミナー『有機エレクトロニクス2010-2015~柔軟で印刷可能な次世代デバイス研究の最前線』で塗布変換型有機薄膜太陽電池の開発動向について講演する)。

■変更履歴
記事掲載当初,冒頭で「米Intel社は2009年6月」としておりましたが,正しくは「米Intel社は2008年6月」でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。