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(前回から続く)

 2009年に入り,名立たる有力企業による電子書籍市場への参入が相次いでいる。例えば,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.は2009年7月,韓国の大手書店と提携し,電子書籍端末の発売に踏み切った。同月には,米国の最大手書店であるBarnes & Noble社が電子書籍ストアを開設。米Google Inc.は,2009年末に電子書籍販売事業を始める計画を明らかにしている。

 これまでマイナーな存在だった電子書籍は,2010年以降,エレクトロニクス業界にとっての一大市場へと変貌を遂げそうだ。調査会社である米In-Stat社の最近のレポートによれば,電子書籍(専用)端末の世界出荷台数は2013年に2860万台に達するという。2008年の出荷台数は100万台前後とされていることから,わずか5年で約30倍にも膨れ上がる計算だ。「もはや電子書籍市場をいかに立ち上げるのかを考えるのではなく,市場に乗り遅れないように,それぞれが何を仕掛けるべきかを考える段階に入った」とは,ある業界関係者の弁だ。

Amazon.comが風穴開ける

 死屍累々(ししるいるい)の山――。これまでの電子書籍の歴史を端的に表現すると,こうなる。「近い将来,電子データの形式で本を読むのが当たり前になる時代が来る」ということは,誰もが予見していた。問題は,いつ,どういう形で市場が立ち上がるのかだった。多くの企業がこれまで市場開拓を試みてきたが,そのほとんどは成功に至らず,難攻不落の市場というイメージだけがドンドン膨らんでいた。

 その状況がガラリと変わったのは,成功に必要な条件を多くの企業があまねく手にできる環境が整ってきたからだ(図1)。成功の要件とは,すなわち(1)電子書籍コンテンツを読むのに適した端末,(2)誰もが快適に使える無線通信機能,(3)魅力的で充実したコンテンツ,の三つである。数年前までは,この三つの要件をすべて同時に満たすのは不可能に近かった。

図1■成功の要件がそろう
図1■成功の要件がそろう
電子書籍市場をめぐる環境は,死屍累々の山を築いてきた2000年代半ばまでの状況と様変わりしている。「端末」「無線通信」「コンテンツ」といった成功への必要条件がそろってきた。