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 公差設計を実施することによって品質とコストのバランスを最適化できることはなんとなく分かっても、実業務の中に定着させていくのはなかなか難しい。今の公差のどこが悪いのか、公差設計に手間をかけることでどのような効果が得られるのかが具体的にイメージできないことに加え、実際に公差設計をしようとしても、その方法が分からなくなっているからだ。これらを解決するためには、大きく3つの取り組みが必要になる(図1)。

図1●公差設計を支える3つのポイント
公差設計を実施することで、品質とコストのバランスを最適化できる。公差設計をする理由を再認識し、実業務で運用していくためには、(1)事例による効果の提示、(2)変更基準の定義、(3)教育体制の整備、といった取り組みが必要となる。

 第1に、実際の開発案件を使った公差の最適化事例を提示し、その効果を明確にすること。これにより、公差設計を実施する動機付けを行う。第2に、公差を最適化する(公差を変更する)基準を定義すること。ここからは、現在の公差設定を最適化するための指針が得られる。公差解析ツールの使い方や、各部品の公差がアセンブリにどう影響するのかを計算する基礎的なスキルを教育することも必要だ。これが、第3の取り組みである。

 以下、これらのポイント別に山洋電気、富士ゼロックス、富士通の取り組みを見てみよう。

実製品の設計に適用

 山洋電気サーボシステム事業部では、仕様と品質を上流工程で作り込むための方策として、3次元CADの活用とフロントローディング型の開発体制の構築に取り組んでいる。3次元モデルの活用によって設計者の頭の中を見える化し、デザインレビューなどでの不具合抽出の前倒しを目指す。

 その中で「公差設計こそ、フロントローディングだという意識を持っている」(同事業部設計第一部主任技師の牧内一浩氏)。公差設計を実施しないと、最終段階での調整工程が必要だったり、歩留まりが悪いことによる全数検査が必要になったり、場合によっては目的の機能が満たせなかったりする事態に陥るからだ。

 最終検査に合格し、一見問題がない製品でも、生産現場での擦り合わせ技術に頼って品質を確保している場合があり、そこには本来掛けなくても済む無駄なコストが隠されているかもしれない。生産工程で使用する工作機械や測定設備の決定にも影響するため、本当にその公差が必要かを考えることは大切だ。「公差設計は地味だが、品質・コストの問題に直結する」(同氏)のである。

 そこで同社は、3次元CADを活用したフロントローディングの1つの取り組みとして、サーボモータの新開発品に対して3次元データを使っての公差解析を実施した(図2)。各部品の公差を積み上げていった場合に、製品の品質に影響する部分のバラつきがどうなるのかを検証したのだ。目的は、公差設計の効果や公差解析ツールの実力を確認/検証すること。設計者が楽になるか、結果を資産として活用できるか、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回せるか、公差設計の文化が根付くかといったことを見極めようとしたのである。

図2●山洋電気が公差解析を適用したサーボモータ
公差設計による効果を検証するために、実際のサーボモータの設計データに公差解析を適用した。左の写真は現行製品。右の断面モデルでは磁石と電機子巻き線は省略している。