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 富士ゼロックスが公差解析ツールを使った検証に取り組みだしたのは、約半年前の2009年秋のことだ。「公差の最適化には、かなり前から取り組みたいと思っていた」(同社海老名事業所生産本部部品・ユニット生産準備部の北森正一氏)という。

 その背景には、強度などをCAEを使って事前検証しても「図面の公差次第で、その結果が影響される」(同氏)ということがあった。つまり、板厚や形状などが公差の範囲内で変化したときの状態まで検証しきれないのだ。過去の公差を流用したところ取引先からの手戻りが発生し、結果的に公差を緩和せざるを得ないといった問題も生じていた。

 加えて、部品の内製化を進めていく過程で、治具の工夫など組立工程でアセンブリの精度を出すノウハウも蓄積され、厳しすぎる公差を緩めてもらう際に「設計に根拠を示せるようになった」(同氏)ことも大きな動機付けになっている。

 同社が、公差解析ツールの適用先の1つとして選んだのが、現在開発中である複合機のユニットだ。同ツールを出図前の公差の最適化に活用しようと試みたのである。従来は設計者が実績ベースで公差を設定し、出図してから生産技術部門で公差の妥当性をチェックしていた。それをこのユニットでは、3次元モデルと前機種の公差を使って仮出図の前に公差解析を実行し、公差を最適化することに取り組んだのだ。

工程能力と寄与率で判断

 公差解析を実施するに当たってはまず、製品仕様から精度として確保しなくてはならないアセンブリの寸法や位置を選び出した(図1)。その上で、精度に影響しそうな部品を抜き出し、それらの寸法を公差解析ツールの入力条件とした(図2*1

*1 今回、公差解析で評価したユニットは18の部品で構成され、部品の寸法数は合計で108カ所。評価結果から22カ所の公差見直しを提案し、実際に17カ所の公差最適化が実施された。

図1●公差解析を適用した複合機のユニット
製品仕様からアセンブリにおいて重要となる6種類の管理項目(1)~(6)を選び出した。その対象となる寸法数は27カ所。なお、穴の位置度に関しては2つのデータム平面からの寸法公差に置き換えた。
図2●ユニットの構成
公差解析を実施するに当たってユニットのアセンブリ精度に影響があると考えられる部品を抽出し、それらの寸法をバラつかせた。
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 このように計算して得られた結果から、緩和すべき公差と厳しくすべき公差を判断する。ここで参考にしたのが、工程能力と寄与率だ。工程能力は、言い換えればアセンブリ精度を満たす確率の高さ。この確率が低い場合には、関連する部品の公差を厳しくする必要がある。逆に、確率が高い場合には公差を緩めることができる(図3)。

図3●公差解析の結果と最適化ルール
公差解析によって得られた寄与率と、工程能力指数(Cp)を使って公差を見直した。工程能力が不十分な場合は寄与率が高い部品の公差を厳しくし、工程能力に余裕がある場合には寄与率が低い部品の公差を緩めている。

 コスト面から考えると、公差を厳しくすればコスト増になり、公差を緩めればコスト減になるとは必ずしも言えない。ある段階からは、いくら緩めてもコストが変わらない場合があるからだ。逆に、あるしきい値よりも厳しくすると、極端にコスト増になる場合もある。単純に寄与率と工程能力指数(Cp)からは決められないので、生産部門のノウハウを入れながら実際には公差を決めていくことになる*2

 公差解析の結果は、公差を厳しくしたり緩和したりするだけではなく、管理ポイントを厳選することにも役立つ。アセンブリの管理精度に全く影響していないような部品寸法は、測定する必要がない。従来は、部品の図面に公差が指定されていれば、すべてを測定することになっていた。

 このように、公差の最適化には工程能力の見積もりが不可欠である。公差を検討するプロセスをどのように構築すべきなのかを富士ゼロックスでは模索中だ。例えば、設計仕様がある程度固まった段階で、生産技術部門が加工方法や部品間の接合方法などを含めて各部品の公差を検討する。設計者が設定した公差を出図前に確認するというプロセスではなく、設計者と生産技術者で公差をつくり込んでいくプロセスである。

*2 ただし、検査に関しては「±0.1では全数検査、±0.2では半数検査、±0.3では抜き取り検査」といったような指針があるため、ある程度のコスト換算のメドは付きやすい。