日本側は,米国主導でID認証の仕組みが義務付けられることによってコスト増などの弊害が生じると懸念しており,低コスト化に向けた仕組みづくりなどを提案していく考えである。
実際,第三者認証機関によるIDの発行や管理にはコストが掛かる。TUV Rheinland社によると,IDの価格は「100万個出荷時の単価で3円ほど」(テュフ ラインランド ジャパンのTarasova氏)である。「マイクロプロセサのような高価な製品では問題ないが,数百円以下の部品では大幅なコスト増につながる」(業界関係者)。
この点で,Intel社のBrown氏が指摘しているような「対象を全産業分野に広げる」という考え方は的を射ている。「対象が広くなればなるほど,IDの単価は安くなる」(業界関係者)と考えられるからだ。半導体だけではなく,自動車や医薬品,食料品など,模倣品で苦しんでいる業界に広げることができれば,コストの問題は軽減される可能性がある。
ただし,ID認証を使ったとしても模倣品を完全に防ぐことは難しい。「例えば,第三者認証機関の担当者を買収して擦り抜けるといった手口は容易に想像できる」(青木氏)。このため,「偽造しにくいIDと組み合わせることで,安全性をより高めることが有効」(同氏)になる。
ISOの規格ではIDの形態を特に規定しない方向である。現状では携帯電話機などで読み取れる2次元コードの形態が多いと考えられるが,偽造しにくいホログラムのマークなどと組み合わせることも可能である。
半導体を例に取ると,IDマークの形態はチップ用,パッケージ用,梱包用の三つに分かれる(図7)。ここでは,最近新たに開発されたチップ用および梱包用のIDを紹介する。
