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 残留ガスを減らすうえで障害になったのが排気マニホールドだった。最近のエンジンは、触媒を早期に活性化するため、なるべく排気マニホールドを短くし、エンジン直後に触媒を配置する構造のものが多い。しかし排気マニホールドの集合部までの距離が短いと、図5(a)の上に示すように、3番気筒の排気バルブが開いた直後に発生する高い排気圧が、ちょうど排気バルブと吸気バルブの両方が開いているオーバーラップ状態の1番気筒に届く。一度排出された排ガスは燃焼室内に押し戻され、高温の残留ガスが増えてしまう。

図5 4-2-1排気システムを採用
(a)短い排気マニホールドの配置(上)だと、3番気筒の排気バルブが開いた直後に発生する高い排気圧が、ちょうど排気バルブと吸気バルブの両方が開いているオーバーラップ状態の1番気筒に届く。この結果、一度排出された排ガスは燃焼室内に押し戻され、高温の残留ガスが増えてしまう。4-2-1排気システム(下)だとこれが避けられ、残留ガスを減らせる。(b)環状に巻いてコンパクト化を図った4-2-1排気システム。
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 これを避けるために、マツダは排気マニホールドの長さを伸ばした4ー2ー1排気システムを採用した。4本の流路をまず2本にまとめ、次に1本にまとめる方式で、それぞれの気筒間の距離が同じになるようにした。

 残留ガスを低減し、実用域のトルクを向上させるためには600mmという長い管長が必要となった。マツダは環状に巻いた「Loop型排気管」を採用することで省スペース化を図っている〔図5(b)〕が、それでも前述のように、排気マニホールドが従来よりも場所をとるのは事実だ。

 この排気システムの問題は、触媒までの距離が長くなるため、排ガスの温度が低下し、触媒の活性化が遅くなることだ。点火時期を遅らせれば排ガス温度を高めることができるが、燃焼が不安定になる。

 そこで新型ガソリンエンジンでは、ピストン上面にキャビティを設け、点火プラグ周辺に濃い混合気を形成することで、点火時期を遅らせても燃焼を安定化することに成功した。こうした燃焼の改善に加えて、エンジン各部の摩擦損失低減にも取り組み、全体では2割程度減らした。

後処理なしにNOxを低減

図6 SKY-Dの燃費特性
現行のマツダ製ディーゼルエンジンや、競合車のエンジンに対しても燃費を約20%向上させた。
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 新型ディーゼルエンジンのSKYACTIV-Dは圧縮比14.0を実現することで、尿素SCR(選択還元触媒)やNOx(窒素酸化物)吸蔵還元触媒(LNT)などの高価なNOx後処理装置を使わずに、欧州のEuro6、北米のTier2Bin5、日本のポスト新長期規制など、世界の排ガス規制をクリアするのが特徴。燃費も従来より約20%向上させた(図6)。

 圧縮比を上げたほうが熱効率は高くなるというエンジン設計の常識を覆し、燃費向上が可能になったのには二つの理由がある。一つは、圧縮比を下げたほうが、燃焼が改善されること、もう一つは、摩擦損失が減ることである。

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