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 こうしたメリットがあるにもかかわらず、これまでディーゼルエンジンの圧縮比を下げられなかった理由は、低温始動性が低下する、暖気運転中に半失火が生じてしまう、などの問題があったからだ。これに対応するため、マツダは1燃焼当たり最大で9回の噴射が可能な応答性の高いピエゾインジェクタを採用。この噴射の自由度を生かした精密な噴射制御とセラミックスグロープラグにより、低圧縮比での確実な始動を可能にした。

 もう一つの技術が、排気バルブに装備したVVL(可変バルブリフト機構)である。低温始動時にカムを切り替え、吸入工程中にわずかに排気バルブを開く。排気ポート内の高温の残留ガスをシリンダ内に逆流させることで吸入空気温度を高めて着火を促進する。

図9 2ステージターボ
図9 2ステージターボ
大小2個のターボを使い分けることで、低回転域でも十分な空気量を確保する。

 さらに、日本メーカーの乗用車用ディーゼルエンジンとしては初めて2ステージターボチャージャを採用したのも、要素技術として注目できる(図9)。2ステージターボは、低速では主に小型ターボ、高速では主に大型ターボを働かせ、低速から高速まで十分な量の空気を充てんすることを狙った過給システム。

 新型ディーゼルではNOxの発生を抑えるために大量EGR(排ガス再循環)を実施しているが、そのために空気量が足りないとすすが発生する原因になる。2ステージターボの採用で、低速でも十分な空気量の確保が可能になった。

AT、CVT、DCTの利点を集約

 新型自動変速機SKYACTIV-Drive開発の狙いは、既存のAT(自動変速機)、CVT(無段変速機)、DCT(Dual Clutch Transmission)の利点を一つに集約することだった。

 日本で多く使われているCVTは滑らかな変速や低速での燃費が優れることが利点だが、高速燃費やアクセル操作に対するダイレクト感では劣る。通常のATは米国では主流だが、低速での燃費、ダイレクト感、滑らかな加速などの点で改善の余地がある。逆に欧州で増加しつつあるDCTは、燃費やダイレクト感でメリットがあるが、発進やクリープの滑らかさに難がある。

 マツダの企業規模で、すべての地域向けに異なる変速機を用意することは現実的ではない。そこでマツダは、従来のATをベースとし、これらすべての変速機の利点を集約した新型変速機の開発を目指した。

 マツダの新型変速機は、既存のATの構造をベースにその弱点を徹底的に改良したものだ。低速での燃費や加速時のダイレクト感が劣るという従来ATの難点は、流体を介して駆動力を伝えるトルクコンバータ(トルコン)を使っていることに起因する。そこでマツダは、従来ATに対して大幅にロックアップ領域を広げることで、ダイレクト感と燃費を大幅に向上させた。