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 生産工場だけでのみ,コスト削減の実績を積んでいるわけではない。店舗においても,レベルの高いカイゼン活動が当たり前に実施されている。その具体的なカイゼン内容は,① 作業の単純化② 便利道具の開発③ スタッフの多能工化,の3つに分けられる(図4)。

図4●店舗における作業カイゼン
サイゼリヤの店舗では,食材を切ったり加工したりはしない。工場から運ばれてくる時点で食材が既に1人分などに小分けされてくる(1)。併せて,さらなる作業の単純化には,道具の開発が欠かせない(2)。例えば,オーブンは上段と下段で温度設定が異なり,それらに取り付けられているコンベヤの流れる速度も違う。上段で流せばピザが焼き上がり,下段で流せばドリアができる。ハンバーグなどは上段を2回流すなど,品目によって回数が決まっている。加えて,スタッフの多能工化も図られている(3)。キッチン担当,フロア担当と分業するのではなく,誰でも両方こなせるようにしておくことで,作業負荷に見合った配置が可能になる。
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 ① の代表的な事例は,あらかじめ1人分などに小分けされて搬送される,スパゲティやサフランライスなどの食材だ。店舗では,「皿に盛るだけ」「ソースとあえて加熱するだけ」といった単純な作業のみで料理を完成できる。包丁を使う必要もなく,新人スタッフでも早く作業を覚えられることに加え,顧客満足度を上げる効果も望める。混雑の具合にもよるが,通常なら時間のかかるハンバーグステーキやドリアを,注文から6~7分で顧客の元に出せるからだ。

 サイゼリヤが独自に開発する② の便利道具は,キッチンなど主にバックヤードで活用されている。その目的は,作業を単純化し,それにかかる時間を削減することだ。

 例えば,上と下の段に2つのベルトコンベヤが付いたオーブン。コンベヤ付きといっても,サイズは家庭用の電子レンジを少し大きくした程度だ。上の段と下の段では,設定温度とサイクルタイム(皿を一方から投入し,もう一方から出てくるまでの時間)が異なる。「ピザは上の段で1回」「ドリアは下の段で1回」など,品目によってどちらのラインを何回流すかだけ覚えておけば,誰でも簡単に焼くことが可能なのだ。

 ③ の多能工化は,もはやサイゼリヤでは欠かせない要素となっている。通常のファミリーレストランでは,キッチンならキッチン,フロアならフロアで人員を分けている。そのため,何組もの顧客が一気に来店するなどフロアで瞬間的に人手が足りなくなっても,キッチンのスタッフは手伝いに行けない。たとえ手待ち状態にあってもだ。ところがサイゼリヤでは,キッチンのスタッフでもフロアが忙しくなれば当然のように手伝いに行く。その逆もしかりだ。普通なら,フロアのスタッフにキッチン作業を覚え込ませるのは難しいが,単純化を究める同社ではそれが可能になる。「同じくらいの規模の他店を見に行くと,『ウチなら半分以下の人員でさばけるのに』と思う」(同社地区長の龍宏子氏)ほどだ。

 「ここまで突き詰めれば,これ以上のムダはないのでは」と思いきや,サイゼリヤはここにとどまらず次の段階に突入した。2008年11月,作業を科学的に検証してムダを排除する「エンジニアリング部」を設置したのだ。その立ち上げに携わったのが,当時は同部部長で,2009年4月には,創業者で現会長の正垣泰彦氏に代わり社長に就任した堀埜氏である。堀埜氏は,2000年にサイゼリヤに入社するまでの19年間,味の素に勤務。同社の工場で,先輩たちに「カイゼンの目」を徹底的に植え付けられた人物だ。