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図1 マルチタッチジェスチャーの設定画面。2本ではウインドウ内の映像のスクロールが可能にできる。
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図2 デスクトップと稼働中のすべてのアプリケーションなどの状況を1画面で鳥瞰できる「Mission Control(ミッションコントロール)」
図2 デスクトップと稼働中のすべてのアプリケーションなどの状況を1画面で鳥瞰できる「Mission Control(ミッションコントロール)」
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図3 指3本でウインドウの位置移動(ウインドウ・ドラッグ)をできるように設定を変更すると,自動的に設定が変わり、フルスクリーン表示したアプリケーションの切り替えは4本指で行うになる。
図3 指3本でウインドウの位置移動(ウインドウ・ドラッグ)をできるように設定を変更すると,自動的に設定が変わり、フルスクリーン表示したアプリケーションの切り替えは4本指で行うになる。
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 Lionでは、タッチ・パッド上に置いた複数本の指の動きで操作する「マルチタッチジェスチャー」により、キーボードやマウスを利用しなくてもパソコンでの基本的な操作が可能になる。この点からは、キーボードやマウスによる操作をなるべく減らしたいというApple社の意図を感じる。

 背景にはタッチ・パネル搭載機、例えば「iPhone」のようなスマートフォンや、「iPad」のようなタブレット端末が急増していることがあるだろう。それにともない、パソコンのアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)でも、タッチ・パネル操作に対応するものが増えてきた。タッチ・パネル搭載機の登場によって、ユーザーは画面内に表示された情報に直接触れて操作する、という経験を多く積んでいる。

 加えて、パソコンを操作するより前に、スマートフォンやタブレット端末でコンピューターの操作に慣れるユーザーが今後増えていく。Apple社の製品の場合、iPhoneやiPadといったiOS搭載機を利用するには、それらと接続するパソコン、つまり「母艦」が必要だった。Mac OSを搭載したパソコンのユーザーになってから、iPhoneやiPadのユーザーになるというのがこれまでの一般的な流れだった。

 今後この流れは大きく変わる。2011年秋に登場するiOS 5では、母艦となるパソコンを必ずしも必要としなくなる。つまり、先にiPhoneやiPadを購入してからMac OS搭載機を購入する、という流れが増えることになる。今後は、10歳代前半でiPhoneユーザーとなり、10歳代後半でMacユーザーになるという流れになるだろう。

 こうした時代が到来すると、ユーザーはどうしてもタッチ・パネルのような操作感を“期待”する。中でも、キオスク端末やデジタル・サイネージ機器など、初見でいきなり利用する公共機器では、ユーザーがタッチ・パネルのような操作を期待するものだという前提で操作体系を設計した方が良い。

 そういった意味で、Lionにおけるマルチタッチジェスチャーの取り組みは、キオスク端末やサイネージ機器の操作体系を設計する際の参考になると考えている。そもそも電子機器全体から見て、タッチ・パネル搭載機のようにディスプレイ(表示部)と操作部が一緒になった機器は少ない。電子機器の大部分は表示部と操作部が分かれている。こうした機器でも、Lionでのマルチタッチジェスチャーの取り組みは参考になるだろう。

ウインドウの概念をなくす

 Lionで導入されているマルチタッチジェスチャーでは、指の本数が増えるほど、操作の“階層”は上位になる。具体的には、指1本ではポインタの位置の移動が、2本ではウインドウ内のスクロールが可能になる(図1)。3本では、左右の動きと上下の動きで実行できる操作が異なる。左右の動きでフルスクリーン表示したアプリケーションを切り替えられる。一方、上方向に指を動かすと、「Mission Control(ミッションコントロール)」と呼ばれる機能を実行できる(図2)。この機能を使えば、デスクトップと稼働中のすべてのアプリケーションなどの状況を1画面で鳥瞰できる。

 設定を変えれば、3本でウインドウの位置移動(ウインドウ・ドラッグ)が可能になる。この場合、自動的に設定が変わり、フルスクリーン表示したアプリケーションの切り替えは4本指で行えるようになる(図3)。

 ウインドウの位置移動をオプションとしているのは、なるべくウインドウ・ドラッグを利用せずに操作して欲しい、というApple側の意思表示だと考えられる。つまりApple社は今後、ウインドウという概念をなくそうとしているのではないだろうか。


 実際Lionでは、1本指によるポインタ操作、2本指による画面(スクリーン)内スクロール、3本指によるフルスクリーン切り替えとミッションコントロールで、パソコンにおいて必要とされるほぼすべての操作を実行できる(ただし、文字入力はのぞく)。このため、ウインドウを意識して操作する必要がない。

――後編に続く――