今後10年,日本は高齢者向け製品やサービスの実験場と化す。そして将来,この実験場で磨かれた“日本発”のノウハウは,世界でも求められるようになる(
それを裏付けるのが,オランダRoyal Philips Electronics社や米General Electric Co.(GE社)といった世界的企業の取り組みである。両社は2011年,日本で高齢者向けの事業に参入する。その皮切りとして,Philips社は緊急通報システム「Lifeline」,GE社(GEヘルスケア・ジャパン)は見守りシステム「QuietCare」のサービスを,それぞれ始める計画だ(
「日本で優れたビジネスモデルを作れれば,世界に展開していける」─。日本で事業に乗りだす狙いについて,フィリップス エレクトロニクス ジャパン 代表取締役社長のDanny Risberg氏と,GEヘルスケア・ジャパン 代表取締役社長 兼 CEOの熊谷昭彦氏は,くしくもこのように声をそろえる(p.35とp.37のインタビュー参照)。まさしく,日本においてノウハウを蓄積し,事業を磨き上げ,将来の世界展開に向けた布石を打とうとしているのだ。
先陣を切る日本,続くアジア諸国
このPhilips社やGE社の動きの背景にあるのは,二つの事実である。① 日本において今まさに,かつてどの国も経験したことがないスピードで高齢化が進行していること。② 将来,同じ状況がアジア諸国を中心に世界にも伝播していくこと,である。
まず①の日本については,1980年代前半には10%にも満たなかった65歳以上の人口比率(高齢化率)が,2020年ごろに30%に迫り,2050年ごろには40%に近づく(