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 今後,世界で高齢者市場が拡大していく中で,エレクトロニクス企業がかかわることができる製品やサービスの範囲も広がっていく。その中で特に注目すべきは,これまで見逃されていた“元気な高齢者”の市場だ(図5)。

図5 “元気な高齢者”のニーズを満たす製品やサービスが狙い目
これまでの高齢者市場の中心は,介護・医療的なものだった。元気な高齢者の欲求や興味を満たす製品やサービスが今後,求められるようになる。
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 これまで高齢者市場といえば,医療・介護の領域が中心だった。もちろんこの領域の市場も今後はさらに拡大し,介護ロボットなどの福祉機器をはじめ,エレクトロニクス企業とのかかわりはますます大きくなるだろう。

 これに対して,普通に生活できたり,ちょっとした助けがあれば普通に生活できたりする,いわゆる元気な高齢者を対象にした製品やサービスは,これまであまり存在してこなかったと多くの専門家が指摘する。「高齢者と言うと,どうしても医療・介護に目が行きがちになる。(富士通とNTTドコモが開発する携帯電話機)『らくらくホン』のように,元気な高齢者を対象にした製品やサービスがもっとあるべきだ」(東京工業大学 大学院 社会理工学研究科 経営工学専攻 准教授の梅室博行氏),「(介護向けの製品やサービスのような)物理的なバリアフリーを実現するものだけではなく,脳の機能低下などを少しだけ補う製品やサービスが必要だ。今のエレクトロニクス業界には,そういう発想自体があまりないようにみえる」(東員病院・認知症疾患医療センター 院長の村瀬澄夫氏)1)

1) 小谷,「高齢者が本当に求めるもの,それを実現してほしい」,『日経エレクトロニクス』,2010年1月11日号,no.1021,pp.107─109。

 実は,このような元気な高齢者を対象にした製品やサービスの領域にこそ,大きな潜在市場があるとする見方が極めて多い。東京大学が実施した約6000人の高齢者の追跡調査からも,「高齢者を大きく分類すると,少しアシストすれば元気に暮らせる層が大半」(同大学の鎌田氏)であることが分かっている(図6)。

図6 「高齢者=介護」ではない
東京大学 高齢社会総合研究機構特任教授の秋山弘子氏は,全国約6000人の高齢者を追跡調査し,加齢に伴う生活の自立度の変化を分 析した。自立度を,3=自立,2=「手段的日常生活動作」に援助が必要,1=「基本的日常生活動作」に援助が必要,0=死亡の4段階で評価した。例えば男性の約10%は,80歳代になっても自立した生活を実現し,約70%は70歳台半ばまで高い自立度を維持していることが分かる。(図:東京大学の資料を基に本誌が作成)
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 実際,長寿命化に伴って,元気に暮らせる期間が一般に長くなることは容易に想像できる。三菱総合研究所の資料によると,65歳以上の死亡者における,平均の「寝たきり期間」は8.5カ月であるという。あくまで単純計算だが,仮に人生80年としても,65歳から79歳までの約14年間は,ある程度元気で暮らせる期間になる。

 ここに向けた製品やサービスが,まさにこれからのエレクトロニクス企業間の新たな競いどころとなるだろう。例えば,これまで通りにいろいろなことがしたいという高齢者の欲求や興味を満たすような家電製品や電子機器,インターネット・サービス,SNSなどである。さらに,元気な高齢者の万が一の事態にも対応できるような健康管理サービスや見守りサービス,生活支援サービスも求められる。

真のニーズを探れ