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 そこで重要になってくるのが,元気な高齢者の真のニーズや,元気な高齢者に向けた製品やサービスのカギとなるポイントを探ることである。それこそが今後,日本という実験場において検証していくべき重要な点になる。「(元気な高齢者の真のニーズや製品/サービスのポイントについては)まだ誰も答えが分からない」(複数の関係者)のが現状だからである。

 高齢者を対象にした三菱総合研究所によるアンケート調査の中に,興味深い結果がある。余暇活動に掛ける金額について「使いたいと思う金額」と「現在の支出額」を尋ねたところ,使いたいと思う金額が,現在の支出額を数万円ほど上回っていたのだ。例えば,65~74歳では使いたい金額28.1万円(年間,以下同)に対し,現在の支出額は23.5万円。75~84歳では18.8万円に対し16.1万円といった具合である。つまり,この結果からは,「高齢者が本当に欲しいと思うものが存在しない」(同社 執行役員 人間・生活研究本部長の長澤光太郎氏)ことや,仮にそうしたものが存在すれば金銭的な余力はあることなどがうかがえる。

 ただし,高齢者向けの製品やサービスに求められるポイントをつかむのは,決して容易ではない。例えば,「第一線の技術者は働き盛り。年齢層が全く異なる高齢者の立場に立った真のニーズは,決して頭では想像できない」(東員病院・認知症疾患医療センターの村瀬氏)ことも,その理由の一つだ1)

1) 小谷,「高齢者が本当に求めるもの,それを実現してほしい」,『日経エレクトロニクス』,2010年1月11日号,no.1021,pp.107─109。

表1 国内の高齢者市場に向けたエレクトロニクス企業による最近の取り組みの例
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 そこで本誌は,専門家への取材を踏まえ,表1に示したような高齢者市場に向けたエレクトロニクス企業の最近の取り組みなどから,製品やサービスのポイントとなりそうな点を五つ抽出した。それは,単なる製品やサービスの分野の分類ではなく,高齢者の生活習慣や消費傾向,思考などを前提に,さまざまな分野の製品やサービスに横断的にかかわってくる本質的なポイントである。具体的には,① 日常生活に溶け込んでいる,② 単純明快である,③ 社会とのつながりをもたらす,④ 居住地域と連携している,⑤ 人間的要素を感じさせる,である。これについては,pp.40─49の第2部「高齢者市場はこう攻める,製品/サービスの五つの要件」で詳しく解説する。