PR

 今後の高齢化社会を考えたとき,エレクトロニクス企業がかかわることができるのは,必ずしも高齢者個人に向けた製品やサービスだけではないだろう。新たな社会インフラの整備にも,大きなビジネスチャンスがありそうだ。

 例えば今後,高齢化の進展に伴って,大きな流れで見れば高齢者の主な「居場所」は病院から地域に変わっていく(図7)。長寿命化によって健康な高齢者が増えたり,高齢者の増加に伴って病院では賄い切れず,在宅医療を推進する方向に進んだりするからだ。そのため,地域を軸とした高齢者に優しい社会インフラの再構築が欠かせなくなるだろう。

図7 地域・自治体の役割が重要に
今後,高齢者の「居場所」は,病院から地域に変わっていく(a)。東京大学 高齢社会総合研究機構は現在,千葉県柏市の豊四季台地域において,「長寿社会のまちづくりのモデル構築」を進め ている(b)。
[画像のクリックで拡大表示]

 こうした未来を見据え,東京大学 高齢社会総合研究機構は千葉県柏市,UR都市機構と共同で,豊四季台地域(千葉県柏市)において,「長寿社会のまちづくりのモデル構築」を進めている(図7(b))。居住者の高齢化が進み孤独死が問題になっている豊四季台団地を高層に建て替え,それによって空いたスペースに訪問看護ステーションや老人ホームなどを設置し,さらに元気な高齢者の働き場所となる野菜工場やコミュニティーの場などを整備するといった構想である。

 このような街づくりの過程においてエレクトロニクス企業に求められているのは,例えば自宅と看護施設,病院を結ぶデータ管理のシステム構築や,野菜工場の建設・管理,地域の中の移動手段となるモビリティー(移動装置)の開発などである。豊四季台地域のモデルはあくまで一例にすぎないが,このような社会インフラの整備は今後,日本のみならず世界のあちらこちらで進んでいくことが見込まれる。

図8 三位一体がカギに
今後は,医療・介護業界や地域・自治体との密接な連携が欠かせない。
[画像のクリックで拡大表示]

 こうした市場に向けては,個人向けの製品やサービスとは異なるノウハウが必要になってくる。そのため,医療・介護業界や地域・自治体と密接に協業していくことが不可欠になるだろう(図8)。

日本メーカーに絶好のチャンス

 高齢者向けの製品やサービスも,高齢化社会に向けた社会インフラの再構築も,実験場になるのは日本だ。それを“味方”につければ,国内のエレクトロニクス企業にとっては絶好のチャンスとなる。身近な場所でノウハウを蓄積し,磨き上げたビジネスを日本のみならず世界にも展開していける可能性があるからだ。

 先行する国内メーカーの中には,事業の軸足自体を高齢者に据えるところも出てきた。三菱電機である。同社が2010年8月に発表した「らく楽アシスト」機能付きの家電製品では,製品の開発軸を70歳の高齢者に定めた(図9)。これにより,高齢者以外の層にとっての使いやすさの向上も狙った(図9(b))。

図9 三菱電機は製品開発の主軸を高齢者に
三菱電機が2010年8月に発表した「らく楽アシスト」機能を搭載する九つの家電製品(a)。こ れまでの家電製品と異なり,製品の開発軸を高齢者にシフトさせた(b)。(図:(b)は三菱電機の 資料を基に本誌が作成)
[画像のクリックで拡大表示]