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試作した耐圧1.1kVのGaN系パワー素子(写真:パウデック)
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 現行のSiに続く、パワー半導体素子(以下、パワー素子)の次世代材料として注目を集めるSiCとGaN。いずれも製品化が始まっており、耐圧600V以上はSiC、600V以下はGaNとされている。だが、この“常識”が覆される可能性が高まった。国内のベンチャー企業であるパウデックが、耐圧1.1kVで、かつ低コストで製造できるというGaN系パワー・トランジスタの試作に成功したからである(図1)。これで、白物家電や電気自動車、産業機器といった高耐圧品が求められる用途で、次世代パワー素子の選択肢の幅が広がる可能性が出てきた。

図1 耐圧1.1kVと電流コラプスの抑制を実現
パウデックは、サファイア基板上にGaN系パワー・トランジスタを試作した(a)。耐圧は1.1kVと高い(b)。ドレイン電圧を印加した後に、オン抵抗が 大きくなってしまう「電流コラプス」現象の発生を抑制した(c)。(図:パウデックの資料を基に本誌が作成)
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 GaN系パワー素子の研究開発品の中には、耐圧1kV超を実現したものもあった。だが、特殊な構造をしていたり、高価なGaN基板を利用していたりと実用化が難しかった。

2層を追加

 今回の試作品は、耐圧1kV超の実現に加え、動作中にオン抵抗が増加する「電流コラプス」を抑制している。従来のGaN系パワー・トランジスタでは、耐圧の向上と電流コラプスの抑制を「フィールド・プレート(FP)」と呼ぶ電極構造で両立する手法が一般的だった。ところが、この手法では1kVを超える耐圧を得るのは難しいとの判断から、パウデックはFPの利用を避けた。印加電圧が高くなり過ぎると、動作時にゲート電極の端とFPの端に電界が集中し、両端の電界強度が極端に強まることで絶縁破壊を起こしやすくなるからだ。一方、電界集中は動作時にゲート電極から漏れる(リーク)電子を増加させ、この電子が電流コラプスの一因となる。