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【前回より続く】

 ソフトウエアの開発は遅れに遅れていた。サボっていたわけではもちろんない。WS003SHのときのように技術試作を待っていたわけでもない。開発自体はWS003SHの上で進められるからだ。実はソフトウエア技術者たちはWS003SHの機能強化版である「WS004SH」の開発に掛かりっきりだったのだ。

 WS004SHはWS003SHに対して搭載メモリを増やし,辞書ソフトなどを標準で搭載するといった改良を加えたモデル。ウィルコムはこれをWS007SHの1カ月前の2006年6月に発売する予定で,シャープに開発を依頼していた。

ソフト開発に取り掛かれない

 WS004SHはハードウエアの変更はほとんどなかったが,搭載するソフトウエアが増えたり,OSである「Windows Mobile」のバージョンが新しくなったりと,ソフトウエアの変更点が多かった。W-ZERO3のソフトウエア開発を担当したシャープ 通信融合端末事業部 第1技術部 係長の高木文彦は説明する。「動作検証などが多く,3月中旬までその作業に忙殺された。手の空いた人間から順次WS007SH向けの開発に回した。全員そろって開発が本格化したのは4月だった」。

シャープは電子メール・ソフトの適合問題を根本から解決するため,WS007SHの開発に合わせて専用ソフト「W-ZERO3メール」を一から開発した
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 WS004SHの開発作業と並行して高木らのチームはもう一つ,新規の開発を進めていた。電子メール用のソフトウエア「W-ZERO3メール」である。W-ZERO3の電子メール機能を,ウィルコムの仕様に完全に適合させるためのソフトウエアだ。

 WS003SHでは,Windows Mobile標準の「Pocket Outlook」を使っていた。だが,Pocket Outlookの動作がウィルコムの通信仕様と完全に合致しないという問題があった。当時は発売に間に合わせるために,苦肉の策としてプロキシ・ソフトウエアを追加開発してしのいだが,抜本的な問題解決には,Pocket Outlookの利用をあきらめて,新規に電子メール・ソフトを開発する必要があったのだ。

そんな話,聞いてないよ

今はW-ZERO3専任となったウィルコム営業開発部企画マーケティンググループ課長補佐の須永康弘氏

 こうした厳しい状況でも,高木らはスケジュール遵守にそれなりの自信を持っていた。WS003SHのときのように,何もかも手探りで開発するわけではなかったからである。WS007SHの機能は基本的にWS003SHを踏襲する。新規の大きな開発はW-ZERO3メールに加えて,テンキーなどの制御と,先読み変換機能付きの日本語変換ソフト「ATOK」の組み込み,バーコード・リーダーの追加といったあたり。もちろん簡単ではなかったが,高木らは十分に間に合うと考えていた。

 楽観が暗転したのは,3月の中旬のある日だった。打ち合わせに現れた須永が,WS007SHの発売に合わせて,W-SIMの改良を進めていると告げたからだ。具体的にはデータ通信中に音声の着信を受けられるように仕様変更するという。