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 東京電力の福島第一原子力発電所で起きた事故を受け、福島県外に新たな工場を設けることを決めた東洋システム(本社福島県いわき市)。大多数の従業員が遠方に避難する中、同社開発部部長代理の宗像一郎氏は単身、神奈川県で新拠点の候補を探し始める。

 宗像氏は、東洋システムの営業所がある横浜市に避難していたため、周辺で新工場の候補地を探すという任務を引き受けることになった。代表取締役の庄司秀樹氏や常務取締役の福島浩氏など経営陣は従業員の安全確保に追われていた上、震災直後ということもあって移動手段に多くの制約があり、自由に動ける状況ではなかった。

左から東洋システム常務取締役の福島浩氏、代表取締役の庄司秀樹氏、開発部部長代理の宗像一郎氏

 ひとまず、神奈川県庁に勤める知人に相談してみた宗像氏だったが、めぼしい候補はなかなか見つからなかった。求めているのは、すぐに入居して生産を始められる工場である。建物の手直しなどに時間をかけている余裕はない。しかし、そうした好条件の物件などそうそう残っているわけもない。

 しかし、条件を絞っていくと少しずつ有力な候補が見えるようになってきたと宗像氏は振り返る。例えば、神奈川県全域で探していたが、営業所のある横浜市や近隣の川崎市は対象から外し、神奈川県の西部に絞ることにした。従業員の生活スタイルを考慮したからだ。「もし生産量の大部分を新工場に移すことになれば、従業員や家族も新工場の近くで生活することになる。だが、横浜市や川崎市は家賃が高いし、電車通勤になることが予想される。本社では自動車通勤の従業員がほとんどである。生活スタイルが激変するのは避けたかった」(宗像氏)。

 神奈川県側も、被災企業を支援したいとは考えていたものの、具体的にどう支援すればよいのか手探りの状態だったため、新工場を探す宗像氏に対して非常に協力的だったという。「自分たちと同じ境遇で工場を探している企業はあまりなかったようなので、いろいろと情報を教えてくれた」(同氏)。