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【前回より続く】

「2.8が良いのではないか」

「いや,それは分かりづらい」

「条件が整えば3が妥当ではないか」

 2000年4月12日。その会議は佳境に入った。複雑に絡み合う厄介な問題が,議論を難航させていた。

 焦点は「Agの含有量(質量%)を,いくらにするか」。微妙な数字の違いが機器メーカーにとって重要な意味を持っていた。参加している機器メーカー各社の実装技術者の表情は真剣だった。手に汗を握る攻防が続いた。

 Pbフリーはんだといえば現在,「Sn-3Ag-0.5Cu」という組成が国内だけでなく世界でも標準的に採用されている。実はこの組成が決まったのが,2000年4月12日に開かれたこの会議の場だったのである。

組成を一本化しよう

 1998年9月に松下電器産業(現・パナソニック)が発売した携帯型MDプレーヤーを皮切りに,国内機器メーカー各社の製品でPbフリーはんだの採用が相次いだ。従来のSn-Pb共晶はんだに比べて性能のバランスに劣ることを認識した上で各社が,適用可能な場所から徐々にPbフリーはんだを採用し始めたのである。

 実際に採用が進むと,Pbフリーはんだの組成が各社でバラバラであることが問題視され始めた。Pbフリーはんだの候補となる幾つかの組成には一長一短があり,各社は各様の考えの下で組成を選択していた。この状況を放置すると,はんだの調達性やコスト面などで問題が生じる。速やかに標準となる組成を決めるべきだという機運が業界内で高まった。

 この機運を受けて,1999年から1年間,国家プロジェクト(以降,国プロ)が実施されることになった注1)。国プロに与えられた使命は,複数のPbフリーはんだ候補を技術的に横一線の条件で評価し,最も汎用的に使えそうな組成を洗い出すことである。

注1) NEDOの支援を受け,JEIDAと日本溶接協会の二つのワーキング・グループがそれぞれ評価 や開発を実施した。研究開発テーマは「鉛フリーはんだの規格化のための研究開発」。

 滑りだしは上々だった。本命となる組成の目星が比較的早い段階で付いたからだ。Sn-Ag-Cu系である。候補として挙がった組成の中で,接続信頼性に最も優れる点が評価された。Pbフリーはんだの課題の一つである高い融点を下げるため,Biなどを添加した組成も当初は候補に挙がっていた。しかし,こうした組成は接続特性に課題があり,汎用的に使うには不十分と判断された。Sn-Ag-Cu系は融点が高く,装置や部品の見直しが必要になるという課題があったが,Pbフリー化をスムーズに進めるためには,まず接続特性を重視すべきという考えが優先された。

日米間で膠着状態に

 雲行きが変わったのは2000年1月。国プロにおける技術評価で,本命組成として絞り込まれていたSn-Ag-Cu系Pbフリーはんだの行く手を,思わぬ特許問題が阻んだのである。

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