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【前回より続く】

キヤノン 環境本部 環境企画センター センター所長の古田清人氏。(写真:皆木 優子)

 2000年暮れ,古田がホストとなり,機器メーカーを中心とする8社の担当者がキヤノンの会議室に集まった。

「ぜひ,やりませんか」

「やりましょう」

 含有量調査の内容を共通化する検討を始めることで,会議の意見はまとまった。2001年1月,検討会が正式に発足する。後に,含有量調査の世界標準を作り上げることになる母体が,ここに誕生したのである。

RoHS指令までには…

 この検討会は当初,有志による集まりで,運営は手弁当だった。「会議室はどうするのか? 資料の準備は? コーヒー代は?…と,そんな心配が絶えなかった」(古田)。

 それでも,活動が新聞で紹介されたことなどをキッカケに,検討会への注目は一気に高まっていった。当初は8社だった参加企業も,発足からわずか1カ月後の2001年2月には20社にまで増えていた。さらには,検討会の存在を知った海外の機器メーカーからも「一緒にやりたい」という電子メールが,古田の元に舞い込んできた。「どうするんだ」。検討会の実より身がどんどん大きくなろうとする状況に古田が焦るほど,エレクトロニクス業界ではサプライ・チェーンにおける有害物質管理への問題意識が高まりつつあった。

ソニー・コンピュータエンタテインメントの家庭用ゲーム機「PS one」が,オランダ税関で一時出荷差し止めとなる。本体とコントローラを接続するケーブルの被覆材から基準値以上のCd(カドミウム)が検出されたためである。この「事件」が新聞紙面をにぎわしたのは,2001年12月のことだった。
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 いずれ施行されるであろうRoHS指令には間に合うように,管理体制を整えたい─。このころ多くのメーカーは,そんな感覚で有害物質管理のスケジュールをとらえていた。しかし,2001年10月19日に発生した「事件」が,その認識の甘さと有害物質管理の難しさを知らしめ,エレクトロニクス業界を大混乱に誘う引き金を引くことになった。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の家庭用ゲーム機「PS one」の輸入差し止め事件である。オランダ税関において,ゲーム機本体とコントローラをつなぐケーブルの被覆材から,同国の規制値を超えるCdが検出されたのだ。

「ゼロ」だったはずなのに

「そんなはずはない」

 事件の一報を耳にしたソニーの冨田の背筋は,一瞬にして凍り付いた。2001年10月19日にオランダ当局が検査を実施することは,数週間前に告知を受けていたため事前に知っていた。だが,ソニーとSCEは「問題なし」と結論付け,安心していたのだ。なぜなら,当時実施していたサプライヤーに対する56物質の含有量調査のリストを当たったところ,Cdの含有は「ゼロ」と書いてあったためである。