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【前回より続く】

Pbフリーはんだへの切り替えによって,フローはんだ付け装置が損傷する事例が相次いだ。中には,はんだ槽に穴が開き,はんだが漏れだすという事例まであった。
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「何だあれは?」

「信じられない…」

「ショッキングだ」

 会場がざわつく。2002年10月に開催された「MES2002 第12回マイクロエレクトロニクスシンポジウム」。壇上には日本ビクターの技術者が立っていた。スクリーンには,はんだのPbフリー化に伴う,ある「事故」の写真が映し出されていた。

RoHS指令に向けて着々と

 2001年から2002年にかけて国内機器メーカー各社は,はんだのPbフリー化を急ピッチで進めていた。2000年6月に業界推奨のPbフリーはんだ組成がSn-3Ag-0.5Cuに決まり,2001年2月には,その組成に関連する複雑な特許問題が決着した。ようやく準備が整い,機器メーカーはPbフリーはんだの本格的な導入に突き進んでいた。

 機器メーカーがPbフリー化を急いだ背景には,EU(欧州連合)におけるRoHS指令の存在があった。Pbなどの有害物質の含有を禁止するこの法律を順守できなければ,EUでの事業が行えなくなる。環境部門や実装技術者だけでなく,開発現場でも既に,はんだのPbフリー化が製品開発に必須の条件として認識され始めていた。

 デジタル・ビデオ・カメラなどの生産を手掛けていた日本ビクターの横須賀工場(神奈川県)も,そうだった。RoHS指令の施行に先駆け早期の完全Pbフリー化を目指す松下電器産業(現・パナソニック)の大号令に従い,グループ企業であった日本ビクターの横須賀工場も,まさにPbフリーはんだへの移行を進めていた。事は,予定通り順調に進んでいるはずだった。

悠々とはしていられない

かつて日本ビクターで実装技術の研究に携わっていた竹内誠氏。(写真:皆木 優子)

「大変な事が起きました!!」

 2002年春の,ある金曜日。当時,日本ビクターの研究所で実装技術の研究に携わっていた竹内誠は,横須賀工場で緊急事態が発生したとの一報を受けた。フローはんだ付け装置のステンレス鋼製のはんだ槽に穴が開き,はんだが漏れだしたというのである。

†フローはんだ付け装置=電子部品とプリント基板の接続個所に,加熱して溶かした液体状のはんだを供給するフローはんだ付けを行うための装置。これに対して,プリント基板上で電子部品を接続する個所にあらかじめはんだを供給し,そこに電子部品を配置してから加熱する手法を「リフローはんだ付け」という。