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【前回より続く】

大阪大学 接合科学研究所 教授の竹本正氏。(写真:太田 未来子)

「ここまで激しいのか…」

 発表会場で,はんだが漏れだしている写真を目の当たりにした大阪大学の竹本正(現・同大学 接合科学研究所 教授)は,強い衝撃を受けた。

 竹本は同様の現象についての検証を,その数年前から進めていた。反応性が高いPbフリーはんだは,Sn-Pb共晶はんだよりもCuやFeなどの固体金属にエロージョン(侵食)を起こしやすい。この現象を検証し,既に学会などで発表してきていた。例えばFeは,はんだごての先端に使われる。Pbフリーはんだで,こて先がエロージョンを起こすとなると,はんだ付け作業に支障を来す問題となり得る。竹本の研究室が進めていた検証は,こうした事態への警鐘につながる意味を持つものだった。だが竹本自身も,はんだ槽のステンレス鋼に穴が開くほどのエロージョンが起きるとは想定していなかった。だからこそ,日本ビクターの発表は「ショックだった」(竹本)。

 はんだ槽のステンレス鋼は,Feを主成分とする固体金属である。溶融金属であるPbフリーはんだによってダメージを受ける可能性は,金属学的に決して不自然ではない。CuやFeがPbフリーはんだによってエロージョンを起こすのと同様である。この問題は日本ビクターだけでなく,業界全体に起きているはずだった。

重い口が開き始める

 日本ビクターの竹内が2002年10月にこの現象を学会で発表した理由も,これが業界全体の問題のはずだと考えたからだ。「我々の発表を受けて,『うちはこんな状況だ』という発表が相次ぐと思っていた」(竹内)。しかし,その後の業界の反応は竹内の予想とは違っていた。他社からは,そのような話は全く出てこなかったのである。

 では,この事故は日本ビクターだけに特異な事象だったのか─。決してそんなことはなかった。同様の問題は,2002年から2003年にかけて複数の大手機器メーカーで,相次いで発生していた。しかし,そのほとんどは外部に公表されず,機器メーカーは個別に装置メーカーなどと協力しながら,水面下で対策を練っていた。