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【前回より続く】

「部品の標準化や共通化,流用設計の適用範囲の拡大によって,コストダウンや開発期間短縮はある程度実現できた。しかし,いつしか全くの新規設計を経験したことがない技術者が増えてしまった」*1。ある技術者は,効率化を求めた弊害として,このような状況を嘆く。

*1 逆に,新規設計部品よりも流用部品に関連した不具合が発生する確率の方が高い,という意見もある。流用部品では既に検証済みだという認識が強く,そのまま進んでしまう。しかし,実は流用部品がどこまで適用可能なのかどうかは,しっかりと見極める必要がある。

 いざ新規設計の案件に取り組もうとしても,設計をどう進めていけばよいのか,その手掛かりさえつかめない。結果,設計初期段階での完成度を高めることが出来ず,「商品力」を高められない。目指すべき仕様・テーマを決定し,それを実現する適切な方法を考え抜く─という「構想力」が今,求められている。

基本を追求し芯の偏減りに注目

 三菱鉛筆が2008年春に発売したシャープペン「クルトガ」は,2009年春発売の上位バージョンと合わせて,累計1000万本を売った。300万本を売ればヒットと言われるシャープペンとしては,大ヒット商品になった。その成功要因の根本にあるのが,芯の偏減りに注目したことだった(図1)。

図1●三菱鉛筆の「クルトガ」開発の大まかな流れ
ターゲットを「芯を回す」ことに絞った後は,比較的スムーズに進んだ。
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 芯の偏減り自体は「以前から認識していたこと」(同社横浜開発センターの中山協氏)の一つ。突飛なアイデアを思いついたわけではない。地道にシャープペンとしての基本機能を追究していった結果,新製品開発のキーポイントであることが分かってきたのだ。

 完成したクルトガを見ると,芯を把持する円筒形部品(中ギア)の中央部が太くなっており,この部分の上下の縁に,微細なノコギリ状の歯が40枚切ってある。筆記時に芯を紙に押し付けたり離したりする動作で芯が上下すると,この部品も上下して,軸に固定した上ギアと下ギアに接触する。軸側にも中ギアと同様に40枚の歯が切ってあって,接触するごとに芯を支える中ギアは少しずつ(1回に9°)回転するという仕組みだ(図21)

1)松田,「機構に工夫を凝らした文具が続々隠れたニーズを発掘し,不満を解消」,『日経ものづくり』,2008年6月号,pp.36-40.

実現可能性で「偏減り」が浮上