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【前回より続く】

4回の試作で基本機能を詰める

 中小企業が独自製品の開発に挑戦する際には,新規設計の部分が多くなりがちだ。板金加工と油圧ジャッキの生産・販売を手掛ける今野製作所(本社東京)が取り組んだ開発事例から,その構想設計の進め方を見てみよう。試作品による試行錯誤をうまく活用しながら,初めて取り組む課題を少しずつ解決していった。

 具体的な開発案件は,足が不自由な人でも自動車を運転できるよう,アクセルとブレーキの操作を手で行えるようにした運転補助装置「SWORD」である2)。本格的な開発は,2006年2月にスタートした。

2)中山,「押しても引いても,押されます」,同上,2009年11月号,p.17,19.

 きっかけとなったのは,以前,車椅子の電動牽引装置の生産を請け負うことで知り合ったアイアールケア(本社東京)から,自動車の改造が不要な着脱式の運転補助装置のアイデアを聞いたことだった。同社は,アクセルとブレーキという二つのペダルだけに取り付け,それぞれを動かす場合にはもう一方のペダルを支点にしてリンク機構を動かす─という基本的な原理を既に考案していた。

 ただ,そのままでは商品化できるレベルではない。まずは,世の中にある現状の運転補助装置の問題点を整理し,開発の目的やテーマを明確にする仕様書を作成。その後,目的の機能を実現することが確認できるまでに大きく4回の試作を実施した(図5)。

図5●運転補助装置の試作経緯
基本機能を確立するまでに,大きく4回の試作を実施した。その間,グリップ方式やロック機構,ペダルの取り付け方法などを試行錯誤している。
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 一連の試作でテーマとなったのが,① リンク機構を握り動作で動かすのか,押し引き操作で動かすのかという「グリップ方式」② 坂道などでブレーキを掛けた状態で固定する「ロック機構」③ より多くの車種に対応でき,着脱が容易な「ペダルへの取り付け方法」─の3点。同時に,リンク機構の各部の比率をどう設定すれば,適切な力で操作でき,かつコンパクトな製品にできるかという点も試作品で検討した。