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【前回より続く】

生産現場の改善も構想力が必要

 構想力は,製品設計だけでなく生産設備の設計でも重要だ。特に,現場の改善は現物による試行錯誤をしがち。どの作業を改善するのかというテーマを明確にし,妥当性を検証しながら構想を練っていくというやり方が,実は改善の質を高める。

 マツダの本社工場では技能者育成の方針の一つとして「現場に密着した改善技能」を掲げる*4。改善技能を高めるために同社が特に力を入れているのが,「からくり」による改善だ。「なるべくお金を掛けずに,知恵と工夫によって課題を解決する」(同社本社工場リーダーの石井万信氏)ためのものだ。

*4 あと二つある。具体的には,「磨き上げた生産技能」「設備に強い保全技能」で,自ら考え,自ら行動できる自己完結型の一人三役の人材を求めている。

図9●塗料ドラムを交換する治具
動力を使わず,かつ作業者に大きな負荷をかけないでドラムから別のドラムへ撹拌機付きのフタを交換できる。
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 からくりによる改善活動を活発化するため,同工場内の各部にインストラクターを養成すべく,座学と具体的なテーマに基づいた実践を約1カ月間にわたって実施している。教育を受けたインストラクターは,自分の部署に戻って同様の教育を実施していく。対象となるのは,「現場のことが分かっているサブリーダークラス」(同氏)。こうして,自主的な改善を実施できる人材を増やしていく。

 例えば,同社本社工場第2車両製造部第2塗装課第2塗装係の松尾宏美氏が取り組んだ改善も,この教育体制の一環で実施されたものだ。塗料ドラムの取り替え作業に向けたからくりの設計である(図9)。質量が15kgと重く,長いシャフトが突き出たフタを簡単に取り外しできるようにした(からくりの仕組みについては,p.59の特報参照)。

まず現場の現状を把握

 からくりを考えるに当たってはまず,現状を把握することから始めた。どのような場所でどのような作業が行われているのか,その目的と課題は何か,そしてあるべき姿がどのようなものかを明確にする。その上で,改善案の具体的な検討に入る。最初に考えたのはフタを取り外す仕組みをどうするか。「最初は空気の圧力を使った装置を検討したが,その供給源の確保が必要なことを指摘され,人力で動かすことを前提に仕組みの検討を始めた」(松尾氏)という。