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 そこで今、各社が取り組んでいるのがパワー半導体材料にSiCを使うことである。SiCは現在使われているSiに比べて絶縁破壊電界強度が約10 倍と高い(図3)。中でもSiC製MOSFETの低い電力損失と優れたスイッチング性能を生かしたインバータは、機器の電力利用効率を向上させることから実用化が切望されている。

†絶縁破壊電界強度=半導体や絶縁体において絶縁破壊を起こす最大電界強度のこと。

図3 SiとSiCの比較
SiCは高温・高電圧に耐え、スイッチング損失が小さい。
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 三菱電機では2006年に耐圧1200V、電流10A級のSiCデバイス(SiC製MOSFET、SiC製ショットキー・バリア・ダイオード(SBD))を開発し、これを用いたSiCインバータによる、定格3.7kWの三相モータの駆動を世界で初めて報告した1)

1) 三菱電機ニュースリリース,「シリコンカーバイド(SiC)インバーターで3.7kW定格モーターの駆動に成功」,2006年1月24日.

 2009年2月には11kWのSiCインバータが、現在主流のSiデバイスを用いたインバータに比べて電力損失を約70%低減することを実証した2)。2009年11月には、SiCデバイスの配置や配線のレイアウトを最適化することで、スイッチング損失を極限まで低減させ、出力20kW、駆動周波数20kHzの条件でSiデバイスに比べて約90%の電力損失を低減することを実証している3)

2) 三菱電機ニュースリリース,「11kWのSiCインバーターで,世界最高値となる電力損失約70%低減を実証」,2009年2月18日.

3) 三菱電機ニュースリリース,「SiCインバータで,世界最高値となる電力損失90%低減を実証」,2009年11月11日.

 こうしたSiCデバイスは当然、太陽光発電用パワー・コンディショナにも応用可能である。2011年には単相200V/5kWのパワー・コンディショナで国内最高の電力変換効率98.0%を実証した。具体的にはSiCのMOSFETとSBDを適用した定格1200V/75Aのパワー・モジュールを開発し、Siデバイスのパワー・モジュールを利用した場合と比べたところ、5kW定格出力時の電力損失を半減させることができた(図44)

4) 三菱電機ニュースリリース,「SiCを用いたパワー・コンディショナで国内業界最高の電力変換効率98.0%を実証」,2010年2月16日.

図4 新開発のSiCパワー・モジュール
SiCパワー半導体を使ったパワー・モジュールを開発した(a)。Si半導体によるパワー・モジュールを使った場合と比較して、変換損失を半減させることができた(b)。
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 なお開発したパワー・モジュールは、太陽電池モジュールが発電する直流電力をインバータ回路に適した直流電力に変換する昇圧回路と、昇圧した直流電力を商用の交流電力に変換するインバータ回路で構成しており、パワー・コンディショナの動作に必要な大電力制御素子をすべて含んでいる。

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