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 とはいえ、量産試作の回数を減らすのは非常に難しいことだ。量産試作の最大の目的は、実物(試作品)を前にして問題点や改善すべき点を見いだすこと。この量産試作の回数を減らすには、それまで試作後に判明していたような不具合や誤りのほとんどを試作前の検討や検証によって発見できるようにしなければならない。すなわち、フロントローディングが不可欠となる。量産試作後に「手戻り」(設計修正)が生じると開発期間の短縮にならないので、量産試作の回数を減らす意味がなくなってしまう。

 ところが、フロントローディングは「見切り発車」と紙一重である。設計初期段階において、未知の事柄に関しては試行錯誤で進めてみるほかない。既存製品で培った経験やそれに基づいた理論を参照することで、試行錯誤をせずに済む部分もある。しかし、特にC2260のように新規設計の部分が多く、顧客の要求品質が高い製品の開発では、どうしても経験や理論だけでは分からない部分が存在する。従来はこの未知の部分を試作によって調べていたが、量産試作を最小限の1回で済ませるには、想定される問題の大多数について事前に検証を終え、設計の完成度を高めておく必要がある。

 そこで重要になるのが、設計自体の妥当性や生産のしやすさに関する論理的な根拠である。富士ゼロックスでは、設計品質を担保する論理的根拠を「設計根拠」、生産品質を担保する論理的根拠を「生産根拠」と呼んでいる。設計根拠や生産根拠を量産試作前にきちんと確定できれば設計の完成度を高めることが可能になり、手戻りを防げる。ひいては、量産試作を1回で済ませられるようになり、開発期間を短縮できるのだ。

 前述の通り、従来の設計根拠や生産根拠の核となっていたのは、既存製品で培った経験やそれに基づいた理論である。問題は、これらでカバーできない部分だ。量産試作は1回なので、当然ながら試作には頼れない。そこで同社はCAEを以前に増して積極的に活用することにした。

* 設計根拠および生産根拠について、正確には富士ゼロックスは次のように定義している。設計根拠は設計品質を担保するもので、具体的には過去の実績(試作/品質確保/再発防止などに関するリスト)、解析結果、公差計算、実験データ、生産要件、仕入れ先要件、各種設計技術標準/ガイドなどである。生産根拠は生産品質を担保するもので、具体的には4M2S(Man/Machine/Material/Method、整理/整頓)、設備/加工工程の標準化、組み立ての標準化/自動化、成形/組み立て/物流の解析結果、仕入れ先要件などである。

筋の良い案を見極める

 これまでCAEは、設計が品質要件を満たしているかを確認するために使うのが一般的だった。そのため、基本的には設計作業がある程度進んだ段階、主に詳細設計で実施していた。

 だが、設計根拠や生産根拠を決めるためのCAEとなると、話は違ってくる。設計根拠や生産根拠が必要になるのは、設計に関する大枠の方針を決める時点、すなわちこれから設計に着手する段階、主に構想設計である。

 C2260の開発における典型的なCAE活用事例としては、高圧電源ユニットの設計が挙げられる。同ユニットからは稼働中に熱が発生するため、冷却性能に十分配慮した設計が求められる。具体的には、部品や冷却ダクトの配置が重要になる。

 その際、既存部品と同じような条件(設置スペースや周辺のユニットとの配置関係など)であれば、経験や理論が適用可能なので、それほど迷うことはない。