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 革新工場を構築する上で,もう一つの重要なキーワードは汎用化だ。専用の装置や機械を汎用性のあるロボットで置き換えるのはその最たるものだが,そのほかに,意外に目立たないが重要なものがある。それは,治具やハンドの汎用化だ。

 通常,製品をロボットで搬送する場合,ロボットが製品を直につかむことはできない。まず,製品を治具にしっかりと固定し,この治具をロボットのアームの先に付けたハンドで把持する。現状では,こうして製品を搬送しているケースが多いのである。

 ところが,これでは品種が異なるごとに専用の治具やハンドを用意しなければならない。いわゆる「一品生産」の特注品になるため,現状では高いコストが掛かっている。扱う品種が変わるたびに,治具やハンドを取り換える段取りの手間や時間もばかにならない。

 加えて,これらの治具やハンドを使っていないときに置いておくスペースを工程内に設ける必要もある。これではショートプロセスにとってもマイナスだ。

 そこで,革新工場の構築を目指すメーカーやロボットメーカーは,治具やハンドの汎用化に躍起になっている。できる限り多くの品種の製品を固定・把持できる,いや,それ以上に何でもつかめる治具やハンドだ。

 その一例が,治具そのものをサーボ化した「治具ロボット(位置決めロボット)」である。例えば,多数の位置決めのピン(以下,ピン)が立っており,これらの一つひとつがサーボ化された治具や,クランプがサーボ化された治具だ。

 製品に対してピンが伸びていき,製品と接触した点でピンの伸びが止まる。すると製品の外形に沿ってピンが固定され,治具ロボットはしっかりと製品を固定する。また,クランプを位置制御し,製品に対して適当な位置で止まって製品を固定する。こうして製品をしっかりとつかんだ治具ロボットを,垂直多関節型ロボットなどで把持して,できる限り多くの品種の製品を搬送するという狙いがある。

 ハンドも同様だ(図5)。ハンドの指をサーボで駆動し,クランプするストロークを自在に変える。加えて,指の本数を例えば3本にして,指同士の間隔を120°で一定にするのではなく,自在に変化させて,いろいろな形状のワークを直接把持できるようにする。こうしたアイデアを次々に具現化している。

図5●ハンドの汎用化の一例
3本の指でワークをつかむハンド(a)。ハンドを下から見た様子(b)。指同士の間隔を自在に変化させて,いろいろな形状のワークを直接把持する。
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 汎用性のある治具やハンドを使えば,設備の簡素化(シンプル・スリム化)も進む。例えば,クルマの車体部品のような大物ワークの搬送でも,1~2台の垂直多関節型ロボットで対応できる。こうした治具やハンドで大物ワークの端をつまむだけで,搬送に十分な把持力が得られるからだ。

図6●ロボット同士でワークを受け渡すイメージ
ハンドの汎用化でさまざまなワークを把持できるようにすれば,ロボットを搬送設備の代わりに使え,工程を簡素化できる。
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 これに対し,現状では大物ワークに合わせた大型の治具を用意し,搬送設備で治具ごと大物ワークを動かしている。大きな治具とワークを扱うため,大型の搬送設備が必要だ。

 汎用性に優れるハンドを使えば,ワークや製品をロボット間で受け渡せる(図6)。すると,搬送設備が不要になり,工程間の「間締め」ができてライン長の短縮に寄与する。

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