PR

少量生産国への支援を充実

 鈴鹿製作所の生産台数はほぼフル稼働で横ばいだが,“チャイルド”に当たるアジア諸国などの生産台数は大きく伸びている(図5)。特に鈴鹿製作所は,アジア諸国など少量生産国が多い地域の拠点マザーになっているので,大規模量産と異なる生産技術の支援が重要な役目になる。

図5●鈴鹿製作所の生産台数推移
2002年の生産台数が多いのは初代フィットが好調だったため。その後,一つのラインを少量生産に特化したTDラインに再編して現在のライン編成に至る。
[画像のクリックで拡大表示]
図6●バルブタイミングは治具で確認
エンジンにセットして使う(a)。目視だと数カ所の確認が必要だが,治具を使えば一発で済む。(b)は治具の単体。
[画像のクリックで拡大表示]
図7●TDラインは少量生産ラインの参考に
1日25台を生産するTDライン。職人技を生かしたスポーツカー向けだが,ラインの設計思想は少量生産ラインの参考になる。
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば手作りの治具もその一つだ。エンジンの組み立てでバルブタイミングを確認するための治具は,セットするだけで複数の個所を一度に検査できる。大量生産の工場だけでなく,少量生産の工場でも役立つ(図6)。

 また,「S2000」を1日25台造る少量生産ラインを持つことが強みになっている(図7)。少量生産国での生産設備とは全く異なるが,ラインに対する考え方は共通点が多いという。

 このほか,鈴鹿製作所には事業管理部海外支援ブロックという部署がある。海外工場の要請を受けると,同ブロックの専門家が支援に出向く。要請の内容はさまざまで,生産能力の拡大から人材育成,工程ごとの品質改善など海外工場の個別事情に応じる。

 海外支援ブロックの人員は数百人レベルだが,機動性が高く所属人数は短期間で大きく変動する。また,拠点マザーとしての機能の明確化に伴って,所長や工場,それに準ずる責任者が直接人選をするなど重要性が高まっている。鈴鹿製作所のマネジメント層は,情報共有のために海外工場を積極的に訪問するようになった。

 ホンダの国内外の生産拠点の関係は総論(pp.52-55)で指摘したように,単純な親子関係からは脱却している。しかし,国内の鈴鹿製作所や狭山製作所が技術の中核になっていることは間違いない。

 そして,ホンダはさらに新たな中核作りに乗り出している。埼玉県寄居町に建設中の新工場だ。2010年稼働予定で年産20万台規模。ホンダは,設立時期の古い鈴鹿製作所や狭山製作所で,これまで構造的な問題で実施できなかった手法も積極的に取り入れていく方針だ。もちろん,その成果は海外工場に展開していく。

 ホンダの挑戦はどんな工場となって結実するのだろうか。