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標準を使った戦い方を進めよ

 ここまで述べたように、HTML5の実行環境がデジタル家電などに実装され れば、Webアプリを動かすだけで、新しい機能を利用できるようになっていく。このことは、一方でハードウエアの価値を希薄化させることにつながる。これ まで独自のプロトコルや、独自のユーザー・インタフェースで囲い込んでいた壁が崩れ去るからだ。HTML5に関わる多くの関係者は「HTML5時代には、魅力的なサービスとハードウエアをセットで提供しない限り、機器メーカーに未来はない」と言い切る。

 このHTML5時代を生き抜くためには、新しいサービスを構想し、それを実 現するための仕様をW3Cなどの標準化団体で積極的に提案していく努力が必要だ。そうすれば「標準対応の製品をいち早く出荷でき、新しい市場を先に押さえ ることができる可能性が高まる」(NTTの川添氏)。さらに標準の中に、標準化できない部分を組み込むことができれば、市場で優位に立てる。非標準部分の 技術を他社に販売したりできるからだ。

 このやり方のヒントになりそうなのが、Web標準を使った映像配信技術に対するMicrosoft社の動きだ。同社は、Webアプリを基盤とした映像配 信においてはHTTPを使った映像配信技術とDRM(デジタル著作権保護管理)が重要と考え、前者に対してはISO/IECで適応型ストリーミング技術の 標準である「MPEG-DASH」を規格化、後者についてはW3Cに対して「Encrypted Media Extensions」の提案をしている(図6)。MPEG-DASHはもともと、Microsoft社が独自に開発していた「Smooth Streaming」などを標準仕様にしたものである。その狙いは、MPEG-DASHとEncrypted Media Extensionsをいち早く採用したサーバー・ソフトウエアやクライアント・ソフトウエアを用意し、自社製品のシェアを高めることとみられる。>

図6 標準化をうまく利用するMicrosoft社
Microsoft社はW3Cなどに参加しており、インターネット技術の標準化に積極的である。標準化をリードすることで、標準対応の製品をいち早く出荷したり、標準化できない部分に自社技術が使えるようにしておくことで、システム提供やライセンス販売で安定的な収益を得られるようにしている。
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 Encrypted Media Extensionsは、デジタル家電側で動作する暗号処理プログラムとインターネット上にある鍵管理サーバーの間でWebブラウザーがどのように振る舞うかを規定したものである。暗号処理プログラムについては、性格上、標準化にそぐわないため規定されていない。

 ここにMicrosoft社の独自技術が入り込む余地がある。ある映像配信事業会社の技術者は、「この暗号処理プログラム部分にMicrosoft社独 自のDRM技術である『PlayReady』を組み込むことで、製品を仕上げるつもりだろう」と見る。サーバーからクライアント・ソフトウエアまで一気通 貫で提供することで、Microsoft社は有利な立場を築けるとみているのである。