「自分の脳波の様子を見られるだけでも,結構面白いと思った。ノート・パソコンのアプリケーションとして,何かできそうな気がした」(東芝 デジタルプロダクツ&ネットワーク社 デジタルライフ事業推進室 室長の徳田均氏)。
2010年5月,東芝は業界初となる「脳波センサ付きヘッドホン」を発売する。米国カリフォルニア州のベンチャー企業であるNeuroSky,Inc.の脳波センサを活用し,専用のアルゴリズムで判定した「ユーザーの集中度/リラックス度」をパソコンの画面上に表示できる(図1)。価格は2万円程度の予定だ。「集中度/リラックス度に応じてキャラクターの動きが変わるゲームや,脳波の変化に連動した音楽を奏でるソフトウエア,またヘルスケア分野への展開など,アプリケーションはいろいろありそう」(東芝の徳田氏)と,将来の応用分野の広がりに期待を込める。
脳計測のデータを活用へ
東芝の取り組みは,一例にすぎない。現在,さまざまな業界において,脳計測データを活用した機器やサービスの開発が進んでいる(図2)。脳の活動から得られるデータを用いて新たなアプリケーションとして仕立てたり,ヘルスケア分野に応用したり,あるいはさらに高度な脳機能研究に貢献したりすることを目指したものだ。
例えば,日立製作所は近赤外光を用いた脳計測装置を2010年4月に発表した。こちらは脳波ではなく,光の散乱/反射を使って脳内の血流量の変化を推定する。研究機関での活用のほか,脳活動を応用したマーケティング(いわゆるニューロ・マーケティング)への適用を狙う。
ニューロ・マーケティングに関しては大日本印刷が,企業向けサービスを2010年4月に開始済みだ。企業の商品開発におけるユーザーの嗜好調査などでの利用を想定する。このほかにも,さまざまな企業や研究機関が睡眠障害の簡易検査や,うつ病の検査といったヘルスケア分野での活用を目指し,動きを活発化させている。
――続く――