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 メール・ソフトに地図ソフト、スケジュール管理ソフト─。以前はパソコン用の市販アプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)で実現していた処理の多くを、Webブラウザー上で実行するWebアプリで代用できるようになった。パソコンにインストールするネーティブ・アプリよりもWebアプリの方が快適に動作する場合すらある。

 同様の変化が、スマートフォンやタブレット端末でも急激に進みそうだ。“アプリのWeb化”の兆候が至る所に現れているからだ。いわゆる「HTML5」でのアプリ開発を基本とする新しいスマートフォン向けソフトウエア・プラットフォーム(以下、モバイルOS)の登場、Webブラウザーの開発競争の激化などが同時に起こっている注1)

 これは、機器メーカーにとって受難の時代の到来を意味する。アプリのWeb化はハードウエアの抽象化であり、機器そのものの性能やデザインで他社製品との差異化を図ろうとする機器メーカーの従来の考え方とは相いれないからだ。付加価値がサービス側に移る中で、「端末事業をどのように手掛けるべきか」という戦略の練り直しが求められる。

iOSとAndroid以外の選択肢

 スマートフォンとタブレット端末は、「世界中の人々が使う標準的なコンピュータ」の座をパソコンから奪い取った。スマートフォンの世界出荷台数は2013年に9億台を超え、従来型携帯電話機を初めて上回る見込みである注2)。タブレット端末も、2014年にはノート・パソコンの世界出荷台数を上回る見通しだ。

 そうしたスマートフォンやタブレット端末を支えるモバイルOSにおいて、Webサービス企業や携帯電話事業者、機器メーカーなどが主導権争いを繰り広げている。米Apple社の「iOS」と米Google社の「Android」という二大勢力に代わる選択肢として、「Firefox OS」と「Tizen」という第3の勢力が登場した。

 いずれもオープンソース・プロジェクトで開発するモバイルOSだ。端末のハードウエアを制御するためのJavaScriptのAPIを提供し、HTMLレンダリング・エンジンとJavaScriptエンジンをアプリの実行環境として利用することを基本とする。

注釈
注1)本記事では「HTML5」を広義の言葉として用いる。HTMLの最新版の他、JavaScriptでOSやハードウエアの機能を利用するための各種のAPIなどを含む。
注2)2013年3月にIDCが発表した予測。スマートフォンの出荷台数が、携帯電話機全体の50.1%に相当する9億1860万台になると予測した。