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 このように、スマートフォン業界がブームを牽引している背景には、携帯電話事業者が端末とテレビの連携に強い関心を持っていることがある。ソフトバンク・グループのソフトバンクBBがアダプタを発売したのは、その最たる例だろう。「AirPlay ミラーリングが登場して以降、スマートフォンとテレビの連携に力を入れている」(ソフトバンクBB C&S統括 SB-SELECTION事業推進本部 SBS事業戦略統括部 マーケティング部 マーケティング課の由良健治氏)。

 NTTドコモ プロダクト部 技術企画担当部長の渡邊信之氏も「テレビとの連携は、端末の付加価値を高めるものとして大いに注目している。連携機能が一般的になれば、端末メーカーに搭載をお願いすることになるかもしれない」と語る。特にNTTドコモは、以前からスマートフォンとAV機器の連携に取り組んできた経緯もある。2010年にDLNAのソフトウエア開発環境などを持つ米PacketVideo社を買収したことからも、積極的な姿勢がうかがえる。

 携帯電話事業者がスマートフォンとテレビの連携に注目するのは、スマートフォン経由による動画やゲームの配信サービスの利用機会増加が見込めるため。スマートフォンとテレビをつないで動画やゲームを大画面で楽しめるようになれば、ユーザーはより多くのコンテンツをダウンロードする可能性がある。携帯電話事業者にとっては、通信料収入やコンテンツ・サービス収入の増加を期待できるのだ。

 今のところ携帯電話事業者は、表向きには無線HD映像伝送への対応を見せていないが、水面下の動きは活発化しているようだ。無線HD映像伝送関連のある半導体メーカーの技術者は「携帯電話事業者の指示を受けた端末メーカーから、問い合わせが殺到している」と打ち明ける。

普及にかけた投資を回収可能

 一方、テレビ・メーカーは無線HD映像伝送に対して及び腰のもようだ。「テレビ・メーカーからの問い合わせは今のところほとんどない。テレビの市場が総崩れとなっている状況では、身動きが取れないようだ」(前出の半導体メーカー技術者)。

 テレビ・メーカーが及び腰なのは、3次元(3D)機能などがそうだったように、テレビに新機能を搭載しても価格維持に結びつかないことが多いためとみられる。しかも、ユーザーはテレビを購入してから買い換えるまで5課~7年は使い続けるため、薄型テレビが普及してしまった現状では、ユーザーに新機能を訴求しづらい。

 一方、スマートフォンは買い替えサイクルが2年程度と短いので、新機能をアピールしやすい。例えば、携帯電話事業者はユーザーが端末を購入する時に補助金を出すなどして普及を促進し、通信やサービスの収益でその投資を回収するビジネスモデルが成り立つ(図3)。関連企業からは、「テレビ・メーカーが対応しなくても、携帯電話事業者の主導でテレビ用無線アダプタをばらまけばビジネスモデルとして成立する」(無線HD映像伝送システム向けの映像処理LSIを手がける米Cavium社 CTO, Broadband & Consumer Divison Japanの柴田潤一氏)という見方も出ている。

図3 携帯電話事業者のビジネスモデル
図3 携帯電話事業者のビジネスモデル
携帯電話事業者の場合、通信料金やコンテンツ収益などの形で普及にかけた投資を回収できる。
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