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 各種の方式の中で、特に本命視されているのがWi-Fi Displayだ。「将来的にスマートフォンの多くがWi-Fi Displayを標準搭載するとみており、アダプタなど周辺機器の製品化を検討している」(アイ・オー・データ機器)というメーカーが多い。

 Wi-Fi Displayは無線LANのアクセス・ポイントを経由せずに機器間で直接通信をする仕様「Wi-Fi Direct」をベースに、上位に必要なプロトコル・スタック・ソフトウエアで構成する実装ガイドラインである。機器のサービスを特定する「サービス・ディスカバリ」などの処理はWi-Fi Directを用いて行い、映像の圧縮/伸長処理とストリーミング・データを管理するトランスポート層などはWi-Fi Display側で処理する(図6)。圧縮/伸長にはH.264を使う。最近のスマートフォンは無線LAN機能を標準搭載していることに加え、H.264のコーデック回路を内蔵するGPUを採用している端末も多いため、実装しやすいのが特徴といえる。「実装面積や消費電力の制約が大きいスマートフォンにおいて、ハードウエアを追加せずに実装できる強みは大きい」(Cavium社の柴田氏)。

図6 Wi\-Fi Displayのプロトコル・スタック
図6 Wi-Fi Displayのプロトコル・スタック
Wi-Fi Directにより、アクセスポイントを介さず機器間を接続して映像を伝送する。映像の圧縮/伸長処理にはH.264を使う。
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 実際、Qualcomm社やBroadcom社などの半導体メーカーは既にWi-Fi Display対応の統合チップセットなどを発表しており、認証テスト待ちの状態だ。無線LANのプロトコル・スタック・ソフトウエアを開発する企業も対応を急いでいる。Wi-Fi Directを使ったアプリケーションの開発環境を提供しているアイ・エス・ビーは「標準仕様が決まり次第、Wi-Fi Displayにも対応していく」という。

Intel社も支持を表明

 このように、無線HD映像伝送における事実上の標準となりそうなWi-Fi Displayに対し、先行してWiDiを製品化したIntel社は規格争いを避ける方針だ。Intel社は「今後、WiDiはWi-Fi Displayの仕様に準拠していく予定である」(日本法人のグローバル・セールス&プラットフォーム・マーケティング事業本部 ネットワーク・マーケティング・マネージャーの梅野光氏)と説明する。

 WiDiは2010年第1四半期にリリースされたVersion1.0では伝送可能な映像が720p(1280×720画素)以下に限定され、著作権保護技術「HDCP(high bandwidth digital content protection)」にも対応していなかった。しかし、2011年初頭にリリースされたVersion2.0で1080p(1920×1080画素)のフルHD映像に対応し、2011年末にはHDCPにも対応するなど、着実に進化している。Version1.0ではH.264の映像圧縮処理をソフトウエアで実行していたため遅延時間が800msもあったが、現在はGPUのハードウエア・アクセラレーション機能を使うことで150ms前後まで短縮している。「遅延時間の短さなどを売り物に、他社のWi-Fi Display対応製品との差異化を図っていく」(梅野氏)。

ゲームに向く非圧縮タイプ

 一方、無線LANとは異なる仕組みで映像を非圧縮で伝送するタイプには、WHDIやWirelessHD、Wireless Gigabit Allianceが規格策定を進めるWireless Gigabit(以下、WiGig)がある。WHDIは5GHz帯を使うため、無線LANを用いるタイプと同様に、異なる部屋間での接続が可能だ。一方、60GHz帯のミリ波を使うWirelessHDやWiGigは電波の直進性が高く、接続機器が見通し外にあると接続しにくい。「信号の放射角を制御するビーム・ステアリング技術によって伝送路上の障害物を自動的に避けるため、人が横切る程度では接続は途切れない」(WirelessHDのアダプタを販売するソフトバンクBBの由良氏)が、異なる部屋にある機器間の接続には向かない。

 非圧縮の方式で共通するのは、遅延時間が短いことだ。WirelessHDは2ms前後、WHDIは1ms以下の遅延しか発生しない。WHDI対応LSIを開発するAmimon社は「ゲームなどリアルタイム性が求められるアプリケーションでの利用をアピールしていく。スマートフォン/タブレット端末のゲームを大画面でもストレスなく遊びたいユーザーは一定数いるはず」(同社 Exective ChairmanのYoav Nissan-Cohen氏)と意気込む。WiGigの遅延時間は不明だが、圧縮/伸長処理のタイムラグが生じないことを考えると、WHDIやWirelessHDと同程度になるとみられる。