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 本企画「地方から始まる『技術立国ニッポン』の再生」で最初に訪問したのは、徳島県である。徳島県の人口は約78万人(2010年の国勢調査より)。47都道府県のうち、多い方から数えて44番目。製造品出荷額は約1兆6756億円(2012年、経済産業省の調べ)と、47都道府県のうち上から37番目。他の都道府県と比較すると、人口や出荷額の数字が見劣りしてしまう。

 だが、徳島県はかつて阿波国と呼ばれていた江戸時代、日本では産業立国として目立つ地域だった。県庁所在地である徳島市は、蜂須賀家が治める徳島藩の城下町であったころ、日本国内の城下町で上位10位に入る人口を抱えていたという。その背景には、藍染めの原料となる藍の生産で城下町が潤っていたことがある。さらに日本酒や塩の生産、林業なども盛んだった。日本酒の場合、徳島では「樽売り」も行われていたという。これは、日本酒を醸造し、樽に詰めた段階で他地域に販売するというものである。現在の製造業で言えば、OEM生産だ。

昔も今も、自社の要素技術を横展開

とくしま産業振興機構 プロジェクトリーダー 山田和弘氏
とくしま産業振興機構 プロジェクトリーダー 山田和弘氏

 こうした地場産業が発展する形で、キラリと光る企業を輩出してきた。例えば、塩田で生産した塩から不純物を取り除く作業が発展したのが、化学系企業である。徳島発の化学系企業は幾つもあり、大塚製薬といった大企業や、白色LEDで世界シェア・トップの日亜化学工業などがある。地場産業が培ってきた技術を生かし、現在の市場状況に合わせて新たな製品を開発していく姿は今も変わらない。

 とくしま産業振興機構にてプロジェクトリーダーを務める山田和弘氏によれば、徳島県を拠点とする中小製造業は何かしらのオリジンがあり、それが派生する形で時代に応じたものを出してきたという。「徳島の中小企業は、常に新しいことを考えている。どこも“際立つ”要素技術を持っており、アメーバのごとく手持ちの要素技術の使い先を広げていく」(山田氏)。

* とくしま産業振興機構=徳島県内の中小企業を支援する公益法人。今回、取材したプロジェクトリーダーの山田氏は、実際の支援活動の企画を担っている。

 江戸時代からの地場産業を発展させてきた分野でなくても、自社の要素技術を発展させる文化は徳島県内の中小企業には浸透しているという。際立つ要素技術の活用範囲を広げる企業については、次回以降の本企画で迫ってみる。