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 「2014~2015年度に向けて、ヘルスケア分野の取り組みを加速させる」─。NTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏は、このように語気を強めた。同氏は2013年3月に開催された同社とオムロン ヘルスケアの共同出資会社(ドコモ・ヘルスケア)による新たな健康サービス「WM(わたしムーヴ)」の記者発表の場で、クラウド・コンピューティング技術やスマートフォンなどを活用したヘルスケア・サービスを今後続々と投入していく意向を示した。

 一方、東芝は2013年3月、脈波や心電など複数の生体情報を同時に計測し、スマートフォンなどに無線でデータを送り出せる無線センサ・モジュール「Silmee」の開発を発表した。開発の狙いについて同社は、「こうしたモジュールを利用するヘルスケアの市場は、2014~2015年に本格的に立ち上がるだろう。それに向けた布石だ」(同社 セミコンダクター&ストレージ社 電子デバイス&ストレージ営業センター 技術マーケティング部新市場開拓推進グループ メディカルヘルスケア担当 参事の鈴木琢治氏)と打ち明ける。

足並みがそろう

 これから1~2年、健康管理や医療といったヘルスケアの分野で、無線技術の活用が一気に本格化しそうだ(図1)注1)。サービス・通信事業者から機器・デバイス開発メーカーまで、多くのエレクトロニクス関連企業は今、いわゆる「ワイヤレス・ヘルスケア」の市場攻略を一様に目指し始めた。冒頭に示したNTTドコモや東芝による取り組みは、その一例にすぎない。

図1 ヘルスケア分野で進む無線技術の活用
ここ数カ月に登場した、無線技術を用いたヘルスケア向け製品やサービスの例。各事例で利用する無線方式を右下に示した。BLEはBluetooth Low Energy、SRRはZigBeeをベースにしたPhilips社の独自方式である。
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 調査会社のテクノ・システム・リサーチも、ワイヤレス・ヘルスケア市場の急拡大を予測する。同社によれば、無線通信対応の健康・医療機器の世界市場は2011年に525万台強だったが、年平均120%前後で伸長し2016年には約1500万台に達するという(図2)。健康・医療機器の無線通信機能搭載率は、2011年の約16%から2018年には25%を超える見込みであり、市場の伸びは顕著であると同社は指摘する。

図2 無線通信対応の健康・医療機器の市場も拡大
無線通信対応の健康・医療機器の世界市場規模の予測と、利用される無線方式を示した。(図:テクノ・システム・リサーチの資料を基に本誌が作成)
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 もっとも、ワイヤレス・ヘルスケアに対するニーズは従来からあった。例えば健康管理分野では、生活習慣病対策に向けた予防医療や日常の体調管理のために、無線技術を活用した利便性の高いシステムが求められていた。一方、医療分野では、患者にさまざまなチューブやセンサが取り付けられて動きが制限される、いわゆる「スパゲティー・シンドローム」を、無線技術によって解放することが待望されてきた。しかし、こうしたニーズの多くはこれまで、期待の段階でとどまっていたのが実情と言える。

 この状況がガラリと変わった背景には、ワイヤレス・ヘルスケアの実現に欠かせない三つの条件が、ここにきて同時にそろってきたことがある。すなわち、(1)サービスを実現する環境の整備、(2)センサ技術の進化、(3)無線技術の進化、である(図3)。これにより、ワイヤレス・ヘルスケア市場の拡大が現実的なものになるとともに、多くの企業がさらに取り組みを加速させるという好循環が生まれだしているのだ。

図3 三つの条件が同時にそろう
サービスを実現する環境の整備、センサ技術と無線技術の進化によって、ワイヤレス・ヘルスケア市場は拡大しそうだ。
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注1)本稿では、「ヘルスケア」という言葉を、医療や健康管理を含む広義の意味で使っている。