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 (2)のセンサ技術の進化としては、小型化や低消費電力化、ウエアラブル化の進行や、多様な生体情報を測れるセンサの登場などがある。

 例えば、冒頭に示した東芝のSilmeeは、小型をウリにする無線センサ・モジュールだ。脈波・心電・体温・体動という4種類の生体情報を同時に測定できるにもかかわらず、外形は約25mm×60mm、重さ約10gと小型・軽量の筐体に実装した(図1(a))。「デザインありきで開発に着手した。ユーザーのモニター評価を繰り返して、これより小さいと紛失してしまうというギリギリの大きさをターゲットにした。その寸法に合わせて内部の回路を必死に設計した」(同社セミコンダクター&ストレージ社 統括技師長附の南重信氏)と胸を張る。

図1 ワイヤレス生体センサの開発が進む
心電や体表温などを測定できる小型・低消費電力の生体センサの開発例。
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 回路の小型化を実現したカギは、センサの種類によって仕様が異なるアナログ・フロントエンドを1チップに集積する技術にある。東芝はこれを、「疑似SoC技術」と呼ぶ(「SoCとSiPのいいとこ取り、ヘルスケアに最適と位置付ける『疑似SoC』」を参照)。今回は、四つのセンサのうち心電と脈波のアナログ・フロントエンドを疑似SoC技術によって一体化した。体温と体動についてはデジタル出力の汎用センサを用いた。

 一方、兵庫県立大学とJSTは、低消費電力化にこだわった絆創膏型の無線センサ・モジュールの開発を進めている(図1(b))。最新の試作品の消費電流は12mA。2.4GHz帯を利用した独自の通信方式によって低消費電力にした。さらに、「プロセサの動作アルゴリズムの工夫などで、大幅な低消費電力化のメドが立っている」(兵庫県立大学 大学院工学研究科電気系工学専攻 回路・システム工学部門 教授の前中一介氏)という。

 なお、図1(b)に示した最新の試作品ではコイン型電池の利用を前提にしているが、現在、シート状の薄型Li1次電池の開発を国内のある電池メーカーと共同で進めているという。絆創膏部と一体化させ、より利便性の高いモジュールの実現を狙う。

着るだけで測定できる

 ウエアラブルな生体センサの実現に向けた開発も相次いでいる(図2)。例えば、米Maxim Integrated社は、心電や体温、活動量などを計測できるTシャツ「Fit」を試作し、2013年1月に開催された「2013 International CES」で披露した。医療機関が、患者情報を継続的に監視する用途を想定する。胸の部分に、各種の制御回路を実装した基板と2次電池を組み込んでおり、同社のマイクロコントローラや電源管理IC、温度センサなど各種のICを活用する。測定データはBluetoothで送信できる。現在は内蔵する2次電池で7.5時間程度の駆動にとどまるが、今後2年ほどで、コイン型電池で24時間の駆動の実現を目指す考えだ。

図2 生体センサのウエアラブル化に向けた技術開発も進む
ウエアラブルな生体センサの実現に向けた技術開発の例。
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 この他、NTTは2013年2月、心電の測定などに向けて着衣に組み込む電極用素材を発表した。絹や合成繊維などの表面に導電性高分子である「PEDOT-PSS」をコーティングしたもの。柔軟性や親水性、強度があり、生体適合性も持つため、肌に密着させても、かぶれや不快感がないという特徴を備える。大学の医学部や研究機関と連携し、今後2年以内に患者に負担の少ない心電の長期測定やモニタリング、在宅医療・遠隔医療などへの応用の道筋を付ける計画だ。

 東芝の無線センサ・モジュール「Silmee」に利用している疑似SoCは、SoC(system on a chip)とSiP(system in a package)の中間的な技術であると同社は説明する。すなわち、SiPよりも小型にできると同時に、SoCよりも開発(組み合わせ)の自由度が高く、開発コストも抑えられる、といった具合である。

 具体的には、異なる種類のダイをウエハー上に再構成し、そこから再度チップを切り出す(図A-1)。これにより、センサの種類によって異なるアナログ・フロントエンドを組み合わせて1チップにできるというわけだ。

図A-1 ウエハーを再構成する
疑似SoCは、異なる種類のダイを再構成したウエハーから切り出すチップである。(図:東芝の資料を基に本誌が作成)
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 2010年のISSCCで発表した技術だが、これまでは有効な応用先がなかったという。しかし、ヘルスケアでは、多様なセンサの組み合わせが必要で、新たな種類のセンサの開発もどんどん進んでいる。これらを取り込みながら小型化を図るためには最適な技術と位置付ける。「もし100万個以上売れれば専用LSIを起こした方が有利だが、ヘルスケアにおいてその時代が来るまでのつなぎとして活用していきたい」(東芝)。