稚内空港から、クルマで稚内市街に向かう主要道の1つに、通称「ミルク街道」と呼ばれる道がある。周辺の牧場から毎朝、搾りたての牛乳を積んだトラックが、牛乳加工工場に向かう。地域経済を支える道のため、冬には優先的に除雪が行われる。ミルク街道を走っていると、湿原や緑の丘陵のなかに、整然と林立した太陽光パネル群が目に入ってくる。出力5MWの「稚内メガソーラー発電所」(図1)だ。

図1●空から見た「稚内メガソーラー発電所」
(出所:稚内市)
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5タイプのパネルから多結晶シリコン型を選択

 同発電所は、2006年にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証実験施設として建設が始まった。総事業費は約50億円。積雪や寒冷など厳しい気候条件の下での大規模な太陽光発電システムの運用(図2)、そして、大型蓄電池を活用した系統安定化対策技術の研究が目的だった。2011年3月には5年間の実証実験が終了し、稚内市に無償譲渡された。いまでは、市内に位置する約76MW、74基の風力発電設備などともに、エネルギー自給自足を目指す「環境都市わっかない」を代表する再生可能エネルギー施設として、視察コースの目玉になっている。

図2●積雪時期の「稚内メガソーラー発電所」
(出所:稚内市)
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 実証施設としての役割から、同発電所は、複数の太陽光パネルを設置し、4期に分けて徐々に増設した。まず2006年の第1期には、9社、5タイプの太陽光パネルを設置して、寒冷期における発電量の違いを検証した。導入したのは、以下だ。シャープ、京セラ、三菱電機、米サンパワー製の単結晶と多結晶シリコン型、三洋電機(現・パナソニック)の多接合型シリコン(HIT太陽電池)、カネカ、三菱重工業製のアモルファスシリコン(非晶質シリコン)型、ソーラーフロンティア、ホンダソルテック製のCIS化合物系だ。1年間の発電量を検証し、期待される発電性能をどの程度発揮しているか示す「PR(パフォーマンスレシオ)評価」を算出した結果、相対的に高かったのが結晶シリコン型だった。

 太陽電池は、温度上昇によって発電ロスが増す。シリコン結晶型はほかのタイプの太陽電池に比べ変換効率が高いものの、高温時のロスが大きいことが欠点になっている。寒冷地ではこうした結晶シリコン型の欠点が顕在化しにくいことが、稚内の実証事業でPR評価が高くなった原因と考えられる。こうした評価を踏まえ、第2期以降は、結晶シリコン型、そのなかでも費用対効果の高い多結晶タイプを主体に設置した。このため、5MW分の太陽光パネルのうち、約9割が多結晶シリコン型となった。