クラックではバイパスダイオードが働かないことも

――パネルメーカーは、工場出荷時に必ずEL画像検査を行っていると聞く。製造・出荷時になかったはずのクラックが、なぜ後々に発生するのか。

 輸送や施工中に、何らかの力が外部から加わった場合が考えられる。そのほか、設置後に風雨にさらされ、昼夜の温度変化を繰り返す中で、元々存在していたものの発電性能に影響を与えていなかった小さなクラックが成長することによって、部分的な断線に発展する場合もあるのではないかと考えられる。

――セルにクラックが起きてしまと、どんな症状が出てくるのか。

 実は、すべてのクラックが発電量を下げるわけではない。かなり大きなクラックが入っても、フィンガーバーと呼ばれる電極パターンが断線しなければ、性能が大きく低下することはない。

 発電量を下げるのは、インターコネクトに至る電流パスが断ち切られるようなクラックである。例えば、インターコネクトに挟まれていないセルの端の部分に、大きな面積の分断を起こすクラックが生じた場合などである。図1の赤線で囲んだ2か所のうち、左側がその例である。

 図1の上側では、セルのインターコネクトの外側に、インターコネクトに沿ったクラックと、斜めの劈開面に沿ったクラックが生じており、電極パターンを切断している。これによって分離された部分でも、発電キャリアは発生しているはずだが、電気的にどこにも接続されていないために、電力として取り出すことができない。

 EL検査をすると、その部分はバイアスされずに暗く映る。図1の右側の赤で囲んだ部分にも大きなクラックが見られるが、インターコネクトに挟まれているため、発電キャリアはどちらかのインターコネクトに届く。この場合は、直列抵抗分が増加して、多少、発電効率が低下する軽度の劣化となる。

 図1の2つのクラックは、図2のように、ともに同じ「クラスタ」(バイパスダイオードで区切られたセルストリングの繰り返し最小単位回路)に生じている。このため、このパネルを使って、太陽光パネルの出力を常に最大化するように最大電力点を自動で追従する制御であるMPPT(maximum power point tracking)制御をすると、この部分のバイパスダイオードがオン状態になって電流が迂回することが期待される。

図2●太陽光パネルの構成図。セルが直列につながり、クラスタごとにバイパスダイオードで結んでいる
(出所:ネクストエナジー・アンド・リソース)
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 ところが、実際にはバイパスダイオードは動作せず、このクラック部分は「ホットスポット」となってしまっている。実際に裏面には、発熱によるバックシートの膨らみが生じている(図3)。クラックによって起きる不具合症状で最も心配されるのが、このホットスポットである。

図3●クラックが発生したパネルの裏面。クラック部分のバックシートが剥離して膨らんでいる
(出所:ネクストエナジー・アンド・リソース)
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 ホットスポットは発熱現象のため、極端な場合は、発電量の減少だけでなく、安全上の問題となる。ホットスポットが発生するメカニズムは以下である。(1)ストリングを構成するセルが直列で接続されているために、電流は各セル共通となる。(2)発生電流能力が低いセルがストリング中にある場合、MPPTで決まるストリングの動作点電流値がそのセルの短絡電流値よりも大きい場合、セルの動作点はマイナス電圧側で均衡する。電圧がマイナスなので電力発生ではなく電力消費(発熱)となる。これがホットスポットである。

――断線によって「ホットスポット」が発生しないように、「バイパスダイオード」で電流が迂回するようになっているのではないのか。

 バイパスダイオードがオン状態になるためには、前述したような、電流能力の低いセルの両端電圧が、そのセル以外のクラスタを構成するセルの発生電圧より高い必要がある。例えば、1クラスタを20セルの直列で構成している場合、その中の1セルの端子電圧が他の19セルの順方向電圧(≒0.5V)の合計である約11Vより高くない場合、バイパスダイオードはオン状態にならずホットスポットとなる。実は中古の買い取り時にこのような素性のパネルが少なからずある。

 図1に示したEL画像のパネルもその一つで、IV特性を測定すると図4の右側のようになる。明白な段差がないので、バイパスダイオードがオン状態になっていないことがわかる。しかも、一見すると左側の正常のパネルのカーブと、大きな違いがないように見える。しかし、よく見るとカーブの肩の位置に当たる特性が異なり、FF(Fill Factor)の値が小さい。

 このIV特性は、パネル1枚ごとに測定したために差がわかるが、パネルが10枚以上直列につながった実際の発電所のストリングにおいて、IV特性を測定してこのようなパネルを不良として検出するのはなかなか難しい。

図4●正常なパネルと劣化した中古パネルのIV特性の比較。右の劣化したパネルは、バイパスダイオードが働いていない
(出所:ネクストエナジー・アンド・リソース)
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