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 以前から医療従事者の研究用データ管理や業務管理に利用されてきたFileMakerだが、ユーザーの要求を満たすシステムを開発し成功に導くことが可能なツールとして、医療現場に深く浸透しつつある。電子カルテシステムと連携する診療支援システムや電子クリニカルパスシステム、さらには地域医療・介護連携ネットワークの基幹システムとして利用するケースも出ている。

 第14回日本クリニカルパス学会学術集会は、2013年11月1~2日、岩手県盛岡市で開催された。ここでは、ランチョンセミナーと同時開催された第5回J-SUMMITS(代表:医療法人葵鐘会副理事長吉田茂氏)全国集会で発表された、FileMakerを活用したオーダーメードシステムの事例を紹介する。

ケース1:地域連携クリニカルパス:北海道での取り組みとFileMakerによる情報共有

 日本の自治体で最大の面積を持つ北海道。札幌など大都市に人口が集中する反面、過疎地域が多く、少子高齢化が急速に進行している。医療においても保健医療従事者の地域偏在などにより地域間格差が大きく、道内各地で医療供給体制に支障が生じている。

 地域医療連携に取り組んでいるものの、6圏域の三次医療圏と21の二次医療圏で構成される広域な医療連携をどう構築していくかなど、多くの課題が存在する。そうした中、地域間の距離が長く日常的な交流が難しいという地域性を、ITを活用してカバーしようという取り組みが各地で進められている。

J-SUMMITS代表の医療法人葵鐘会副理事長吉田茂氏

 北海道地域連携クリティカルパス運営協議会は、北海道大学医学部、札幌医大、旭川医大をはじめ、北海道医師会や同薬剤師会、同看護協会、同介護支援専門員協会などが参画する北海道最大の地域医療連携協議会だ。道内どこでも使える広域地域連携パスの開発と既存の地域完結パスとの連携、ITを運用した連携とデータベース化を進めている。

DBPowersの医療情報顧問赤澤孝司氏

 同協議会は脳卒中専門部会、急性期心筋梗塞専門部会、システム・運用部会で構成され、北海道版広域型連携パスの開発・運用、北海道広域連携型クリティカルパスを運用するITシステムの開発・運用に取り組んできた。現在、北海道を中心にFileMaker Proによる医療向けソリューションの受託開発を手がけるDBPowersで、医療情報顧問を務める赤澤孝司氏は「2011年度から北海道広域型脳卒中クリティカルパス開発に取り組み、1年間の試行期間を経て12年度に本格運用を開始しました」と説明する。

 同年には北海道広域型急性心筋梗塞クリティカルパスの試行も開始し、今年度は脳卒中連携パスのデータ集積が進んできたため、その運用評価・修正などに取り組んでいるという。「そのデータ集積を目的とした、Web登録システムの基幹部分を担っているのがFileMaker Proです」(赤澤氏)。

 また、回復期リハビリテーション病床が不十分な中空知地域では、一般病床病院とのシームレスな脳卒中治療連携を可能にするための軽症脳梗塞地域連携クリニカルパスを開発。紙での運用から、ITを活用した運用へと進展させている。

 中空知地域は医療人口16万人に対して、脳神経外科急性期病床40床、近隣の自治体に80床の専門病院があった。しかし、回復期リハビリテーション病床は35床しかなく、脳卒中患者の転院先は、地域の一般病床あるいは他地域の回復期リハビリテーション病床に頼らざるを得なかった。回復期医療体制が不十分で、脳神経外科がある砂川市立病院以外は脳卒中治療経験が少ない医療機関が多く、それに伴い脳卒中に関する知識も不足していた。さらに、情報共有・情報伝達ツールがないなどの課題があった。

現札幌白石記念病院副院長の髙橋明氏

 「そこで医師・看護師・療法士などによるストリークチームを結成し、出張教育を行いながら近隣施設への軽症脳卒中患者の受け入れ体制を構築。同時に脳卒中地域連携クリニカルパスを用いて脳卒中地域連携を行いました」。当時、中空知の中核病院である砂川市立病院脳神経センター脳神経外科に勤務していた髙橋明氏(現札幌白石記念病院副院長、脳卒中治療センター長)はこう経緯を説明する。

 2004年当時に開発した紙ベースの軽症脳梗塞地域連携クリティカルパスは、医療者用、患者用、脳卒中生活者自立支援プログラム、転院時・退院時チェックリスト、経過表などから成る。

 「医療者用パスは薬、点滴の状況、麻痺状態など、簡単な評価で記入する方法を採りました。紙媒体は、作りやすい、運用しやすい、低コストという利点はありました。その一方で、破損・逸失しやすい、書き間違いが起こる、各医療施設から収集してアウトカムを評価するのが難しい、という問題がありました。そこで、ITによる情報共有システムを開発し、脳卒中医療と福祉に関わる多職種(ストロークスタッフ)が抵抗なく入力できるような仕組みを構築・運用しました」(髙橋氏)。