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院内がん登録システムをFileMakerで開発、がん登録協力医療機関へも提供

 大阪府のがん登録事業(大阪府悪性新生物(がん)患者登録事業)は、大阪府における悪性新生物(がん)対策を推進するとともに、府内における医療水準の向上を図ることを目的として、1962年にスタートした。運営は、大阪府健康医療部、大阪府医師会、大阪府立成人病センターがん予防情報センターの3者が協力して実施している。大阪府立成人病センターがん予防情報センターが届出/死亡/予後情報の整理・登録・集計・報告集作成などすべての登録作業を担当し、府内医療機関の院内がん登録に対する技術支援、協力医療機関への情報サービスを提供している。

 「われわれの事業は51年目を迎える歴史を持ち、当初から医師会の協力を得ながら、がん発生の全数を捕捉し、がん予防と治療水準の向上に努めてきました。地域がん登録の精度向上のためには院内がん登録がきちんと成されることが重要であり、がん診療連携拠点病院のみならず、協力医療機関に対する院内がん登録の技術的な支援を推し進めてきました」(大阪府立成人病センターがん予防情報センター長 津熊秀明氏)

大阪府立成人病センターがん予防情報センター長の津熊秀明氏

 院内がん登録は、基本的にはがん診療連携拠点病院に課された義務であり、標準化された登録様式に則り、各がん診療連携拠点病院でさまざまな院内システムを利用して登録している。国立がん研究センターがん対策情報センターが、その標準ソフトとして2005年から「Hos-CanR」(最新バージョンはHos-CanR Plus)を提供してきた。200施設以上で利用されているといわれるが、実際には医療機関が独自で開発したり、電子カルテベンダーが提供するパッケージを利用したりするなど、医療機関でさまざまな対応をしているのが現状だ。

 大阪府立成人病センターでは、さまざまな汎用デスクトップソフトウエアを使った試行錯誤の後、1996年頃からFileMaker Pro 3.0を利用した「がん患者登録システム」を開発・運用していた。同システムは、かつて在籍していた味木和喜子氏が開発。その機能、精度、操作性の高さから、大阪府がん登録への協力医療機関に提供してきた。

 「それまではAccessなどでがん患者登録システムを開発・運用してきました。がん患者登録システムは、FileMakerの利用に造詣が深かった味木先生が、操作性に優れたシステムが作れるということで開発したものです。拠点病院の標準登録項目、地域がん登録標準登録票項目に準拠し、さらに拠点病院と同等の院内がん登録を目指す医療機関にも対応できる機能があり、現在でも多くの病院で使われています」(津熊氏)

 がん診療連携拠点病院が行う院内がん登録と地域がん登録の大きな違いは、標準登録項目数が異なること。特にがんの進展度の取り扱いが、院内がん登録では国際対がん連合(UICC)が規定するTNM分類(原発腫瘍の広がり、所属リンパ節転移、遠隔転移)の3つの組み合わせによる病期(ステージ)分類に従っているのに対し、地域がん登録では臨床進行度で行うという違いがある(実際の院内がん登録では、地域がん登録の項目である臨床進行度も登録・提出している)。大阪府立成人病センターがん予防情報センターが開発したFileMaker版がん患者登録システムは、地域がん登録標準DBSへの登録様式に準拠し、院内がん登録と地域がん登録との連携、標準化を重視した設計が特徴だ。

がん予防情報センター企画調査課参事の井岡亜希子氏

 バージョンアップしながら長年提供されてきたFileMaker版がん患者登録システムだったが、開発者の異動などもあり、メンテナンスができなくなり、新しいFileMakerバージョンへの対応もできなくなっていた。また、成人病センター情報システムの更新に伴い、既存の院内がん登録システムの大幅改修が必要となっていたという。

 「そのため、院内がん登録システムをHos-CanRへ移行することも考えました。しかし、Hos-CanRは入力項目の整合性チェックのロジックが公開されておらず、不安がありました。そこで、2010年度に大阪府が地域がん登録の標準DBSを導入することを機に、院内がん登録システムをはじめ、標準DBSとの連携を重視した各種システムを開発するに至りました」(がん予防情報センター企画調査課参事 井岡亜希子氏)と、大阪府がん登録の新たなシステム構築の背景を話す。