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 カンファレンス用クライアント端末は、千葉県こども病院側は周産期センターの産科外来、NICU、循環器病棟に、千葉大学病院側は周産期母性科の医局に設置した。実際の運用は、双方とも大型ディスプレイを設置した部屋に集まり、月1回のペースで合同カンファレンスを開催している。

循環器病棟の一室に設置された遠隔カンファレンスシステムのクライアント
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 「当初は運用シーンの一つとして、産科外来で胎児心エコーの検査をしながらリアルタイムでカンファレンスできる点を想定し、モバイル性を要件としていました。心エコー装置のプローブの位置や角度を、その場で産科医に指示しながら検討した方が診断の精度を上げられると考えたからです。ただ、相手側は大学病院の医師で検査レベルはある程度高く、プローブの指示をする必要はないこと。また、合同カンファレンスに参加するメンバーのスケジュール調整をすると、それぞれの施設で集まり録画した心エコーのデータを使って実施する方法がより利便性が高いため、現在のような形態に落ち着きました」(伊達氏)という。

 2012年4月から現在(2013年1月)までに、千葉県こども病院と千葉大学病院とで遠隔カンファレンスシステムを用いて症例検討された件数は約40件。そのほとんどが循環器系の胎児の症例で、多くが千葉県こども病院の周産期センターで分娩し、新生児治療を実施している。

千葉県こども病院循環器科部長 中島弘道氏

 千葉県こども病院循環器科部長 中島弘道氏は「以前は心エコーの画像を録画したファイルを当院に持参してもらう、電話で検討するなどの方法を採ったこともあります。しかしこのシステムならば、お互い1カ所に集まる必要がないにも関わらず、フェース・ツー・フェースの会議と同レベルのカンファレンスが可能です。当院の患者には重症者も多いことを考えると、医師が施設を離れるというリスクを回避できる面も大きいと考えています」と話す。中島氏は、機能的な利点として、心エコーの血流も鮮明に表示でき、アノテーション/ポインティング機能を利用して丸をつけたりすることで、「ここが、そこが」という言葉でもコミュニケーションが取れる点も指摘した。

周産期センターの機能を活かす出生前診断と事前準備が可能に

 遠隔カンファレンスシステムの千葉県こども病院側のメリットは、同院の専門的機能を必要とする症例であるかどうかを、事前に判断できることだ。これまでは院内に産科がなかったこともあり、分娩後に重症の新生児を搬送により受け入れなければならなかった。その反面、すぐには同院の機能を必要としない新生児でも、念のために搬送されるケースもあった。いずれも、新生児を搬送することで生じるリスクを覚悟する必要があった。

 「的確な出生前診断の遠隔カンファレンスにより、当院の周産期センターの機能を十分に活かすことが可能ですし、どのような患者がいつ搬送されるかスケジュールが立てやすくなりました。医師や看護師が、事前の準備をしやすくなったこともメリットです」(伊達氏)と話す。

 一方、伊達氏は千葉大学病院のメリットについて「産科医は母胎の状況には詳しいですが、生まれてくる新生児の専門家ではありません。出生後に当院の専門的な知見が提供されることは、大いに役立つのではと思っています」(伊達氏)。また新生児の治療経過を遠隔カンファレンスによってフィードバックすることで、お互いレベルの向上に寄与するとも指摘した。伊達氏によると、同院が導入した遠隔カンファレンスシステムに対して興味を抱く近隣の医療施設が出てきており、今後千葉県内でシステム利用を拡大していく構想もある。ただし、利用を拡大していくためには、産科医の出生前診断の精度を高めると同時に、参加する医療機関などの設備投資の意欲にかかっていると指摘する。

 伊達氏は設備投資について、開業医の参画を進めるには投資負担が課題になると考えている。「開業医向けには、もう少し簡便なシステムにしてコストダウンを図る必要があります。そうしたシステムの登場によって、一般の産科医と当院の周産期の専門医との連携が拡大していくことを望んでいます」(伊達氏)と語った。