技術的には発熱量1/100に
HEED-HARP技術を活用した内視鏡カメラや、同カメラを用いた内視鏡の試作はこれからの段階だが、「高感度」という特徴を生かすことで従来の内視鏡に対して具体的にどのような差異化を図れるのか。大きく三つの可能性がある。すなわち、(1)発熱量の低減、(2)スコープの細径化、(3)スコープのワイヤレス化、である(図3)。
(1)の発熱量の低減が実現するのは、周辺照度が低くても従来のカメラと同等の画像を得られるからだ。パイオニアは、「あくまで技術的な実力としての試算だが、従来の内視鏡に対して1/100程度の発熱量にできる可能性がある」(同社 医療・健康事業開発室 室長の林稔氏)と踏む。
内視鏡では、暗い体内を照らすため、ハロゲンやキセノン光源を用いた相当な大きさの光源ユニットが一般的に使われている。最近では、発熱量低減のためにLED光源を利用する動きも出てきているなど、発熱量は内視鏡において解決すべき課題の一つになっている。大幅な発熱量低減が実現すれば、熱やけどなどの体内組織への影響も最小限に抑えられる。
(2)のスコープの細径化は、「高感度であるためカメラは手元に配置しておけばよく、スコープの先端にCCDを搭載するといった従来の内視鏡のスタイルを変えられる可能性がある」(パイオニアの上條氏)からだ。従来のスコープの径は、少なくともCCDの大きさが必要で、スコープ内にはCCDからの配線などを通す必要があった。細径化できれば、患者への負担を減らすことができる。
(3)のスコープのワイヤレス化は、光源ユニット自体を不要にできる可能性があるからだ。従来は、光源ユニットとスコープがケーブルでつながっていたが、仮にスコープ先端にLEDなどを搭載するだけで済めば、光源ユニットとケーブルが要らなくなる。
光ディスクでセンサ開発も
パイオニアは、今回の内視鏡カメラの開発を皮切りに、医療・健康分野を同社の新たな事業領域として育てていく考え。2012年4月に、医療・健康事業開発室を発足させ、同社の技術を医療・健康分野に生かすための検討を進めている。今回の内視鏡カメラ以外では、例えば、光ディスク技術を生かした小型の血流センサの開発にも取り組んでいるという。