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産科施設はわずかな設備投資で参加可能

 胎児遠隔診断システムへの参加は近隣の産科施設に呼びかけ、それまでも連携を密にしてきた施設を中心に6施設が参加を表明。2008年秋より各産科施設との間にNTTのフレッツ網を利用したVPNを構築して個別の接続テストを行い、翌年10月から本格的な運用を開始した。

産科施設側の設備は既存の超音波診断装置とPCの他に、ビデオキャプチャーやWebカメラ、ヘッドセットなど、2万円程度の設備投資で済む(回線設置料は除く)。
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 埼玉県立小児医療センター側には、5台の遠隔診断用PC端末が設置されている。ただし、既存のテレビ会議システムを利用したため、追加導入した設備はビデオキャプチャーと録画用の大容量ハードディスクのみ。一方、産科施設側の設備は既存の超音波診断装置とPCの他に、超音波診断装置のアナログ映像をデジタル化して取り込むビデオキャプチャーユニットと会議用のWebカメラ、ヘッドセットで構成。設備投資は2万円程度と、アクセス回線のフレッツ光設置費用だけで済んだ。小児医療センター側のシステム運用・維持費は県の予算で賄われており、参加施設は光ネットワーク利用料を負担している。

 実際の胎児遠隔診断は、録画した超音波画像をテレビ会議システムに送信し、Webカメラとヘッドセットを装着したPC端末で画像を共有しながら検証している。心疾患の疑いがある胎児診断は菱谷氏らが対応しており、中枢神経系や整形外科系、泌尿器疾患などの症例は、各診療科の専門医が対応。場合によっては複数の専門医が診断に加わるケースもある。「妊婦さんに検査を実施しながら画像をリアルタイム送受信して遠隔診断することも可能ですが、妊婦さん、産科施設の技師、当センターの医師とのスケジュール調整が困難であるため、実際は9割以上が録画画像を用いた遠隔診断です」(菱谷氏)。通常は外来診療時間外に産科施設スタッフと電話で打ち合わせの上、実施しているという。

 遠隔診断で利用する画像は、通常は超音波診断装置の2次元画像。STIC(spatiotemporal image correlation)と呼ばれる、ダイナミックに胎児心臓の動きを多断面表示、表面表示できる4次元超音波技術による画像も、時折利用するという。

 具体的には、胎児画像を見ながら産科施設スタッフがスクリーニングで異常が疑われた部分を説明し、小児医療センターの医師が見解を述べ、早急に周産期医療施設への紹介すべきケース、分娩のアドバイスが必要なケース、出生後に専門医が対応すれば大丈夫なケース、など的確なトリアージを行う。また、産科施設スタッフと専門医のテレビ会議システムを通したやり取りは、後日の検証用や万が一トラブル発生時の対応用にすべて録画用ハードディスクに保存している。