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外来精査件数とほぼ同数が遠隔診断で実施

 本格運用を開始した2009年10月1日から2012年3月31日までに6施設との間で実施された胎児遠隔診断の実績は、108例(105人)に上る。産科施設からの依頼の内訳は、心疾患の疑いが96例と最も多く、小児外科疾患5例、中枢神経疾患3例(2例が心疾患との合併)、泌尿器疾患3例、整形外科疾患、形成外科疾患、肺疾患が各2例と続く(合併例も含む)。このうち33例がSTICによる遠隔診断だったという。

 埼玉県立小児医療センターでは、産科施設によるスクリーニング検査後に外来精査に訪れる患者は、連携の取り組み強化により2003年頃から増加傾向にあるが、胎児遠隔診断の試験運用を始めた2009年には外来精査件数は約50件。本格運用後の翌10年と11年では、外来精査が30~40件に対してほぼ同数が遠隔診断によって行われている。参加施設が6施設ながら、妊婦の負担の大きい外来精査が減少し遠隔診断が着実に増加している。

胎児遠隔診断システムの本格運用後は、外来精査が30~40件に対してほぼ同数が遠隔診断によって行われている。
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 「外来精査で周産期医療施設に紹介した例は年々減少しており、2011年にはゼロ件でした。一方、遠隔診断の段階で重症であることが判明し、産科施設から直接周産期医療施設に紹介するケースが増えています」(菱谷氏)。遠隔診断による産科側へのアドバイスで正常・その後のフォローは不要な例が約37%、産科退院後に小児医療センター外来へ促す例が約17%などさまざまなケースがあるが、いずれも重症例を確実にスクリーニングできていることを表している。

 菱谷氏は、産科施設から周産期医療施設に送られる例が増えている背景の1つとして、産科施設の技師のスクリーニングスキルが向上していることを指摘する。そもそも、胎児遠隔診断を始めた当初から、技師が在籍する産科施設が積極的に利用する傾向があった。産科医師は日常診療に追われているため、なかなか自ら十分なスクリーニングを行う余裕がなく、遠隔診断システムの利用が難しい。しかし技師がいれば、医師が自ら実施しなくてもシステムを利用できるからだ。

 「テレビ会議システムで会話しながら遠隔診断をする際に、専門医から画像診断についてのフィードバックが得られることや検査そのものの適切なやり方をアドバイスできるため、遠隔診断システムが教育ツールとしても役立つことがわかりました。技師さんのスクリーニングレベルが向上してきたと感じています」(菱谷氏)。

 産科施設との連携発展のために、菱谷氏は超音波画像の遠隔診断における保険診療が認められることが必要だと強調する。放射線画像の遠隔診断には、診療報酬が認められている。しかし、超音波検査については胎児心エコーの診療報酬が2010年4月から認められたに留まっている。

 「胎児遠隔診断は、専門施設、産科施設が無報酬で実施しています。今後何らかの報酬が得られないと、持ち出しになるばかりです。保険診療が認められることが重要ですが、専門医療施設と連携して胎児診断を積極的に行っている産科施設に対して、自治体が補助金などで支援するなど、行政側の対応を強く望みます」(菱谷氏)と、地域の医療施設が連携した周産期医療体制の確立の点からも重要だと持論を述べる。

 産科施設との連携拡大、遠隔診断参加施設増加のために菱谷氏は、地域の産科医に声をかけてデモンストレーションに招待し、産科側との間で胎児遠隔診断システムを使ったシミュレーションを行っていく予定だ。それにより「実際に利用価値を理解してもらい、利用拡大につなげていきたいですね」と述べた。


■病院概要
名称:埼玉県立小児医療センター
住所:埼玉県さいたま市岩槻区馬込2100番地
診療科:小児科(未熟児新生児科/代謝内分泌科/腎臓科/感染免疫科/血液腫瘍科/遺伝科/総合診療科)、アレルギー科、循環器科、神経科、精神科、小児外科、心臓血管外科、脳神経外科、整形外科、形成外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、リハビリテーション科、小児歯科
病床数:一般病床300床(NICU15床、CCU4床、ICU8床、無菌室2床)
職員数:548名(2012年4月1日)
URL:http://www.pref.saitama.lg.jp/soshiki/q04/