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システム更新時に通常診療を実現できたバックアップシステム

 電子カルテシステムの更新時には、システムを数日間停止する必要が出てくるケースが多い。診療・業務を継続しなければならないので、現場のスタッフはもちろん、医療情報部門にも多大な負担がのしかかる。名大病院は今回のシステム更新に際して、3日間のシステム停止が必要だった。吉田氏は「5年前の更新時とは比較にならない不安がありました」と告白する。

 というのも、2007年以前はまだ手書き伝票が残っていたため、更新時に一時的に紙運用に切り替えても、混乱なく業務を遂行できたのに加えて、第4次システムが年に数回システム障害を起こし、元に戻るまでの間紙による運用を実施していたので、職員もシステム停止に慣れていた。

名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター長の吉田茂氏
名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター長の吉田茂氏

「ところが、電子カルテ導入から10年が経過し、第5次システムは過去5年間システム停止を伴う障害を一度も起こさなかった。そのため、手書による記録や処方せん発行、各種オーダー伝票発行の経験がないスタッフが多くなりました」(吉田氏)。システム停止に不安を抱いた吉田氏が開発したのが、更新期間にほぼ通常業務が行えるFileMakerベースの電子カルテ停止時システムだ。

 名大病院では、各診療科・部門で開発・運用しているFileMakerによるアプリケーションが40数種類に上る。それらアプリケーションのポータルとして機能している「名大の森」は、電子カルテのデータベースと連携・同期しながら稼動しており、患者データをはじめ、職員、病名、薬剤、検査、病棟など各種マスターをFileMaker側で保持している。これら電子カルテの根幹となるデータをFileMakerで利用できる環境にあったため、電子カルテ停止時システムのアプリケーション開発はわずか10日ほどで済んだ。

電子カルテ停止時システムのログイン画面
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 電子カルテ停止時システムは、起動画面からカルテ記載画面、入院患者一覧画面など従来の電子カルテ画面とまったく同じレイアウトで並んでいる。起動画面の利用者IDやパスワード入力フィールド、ログインボタンの位置も同じなら、利用者ID/パスワードを入力してエンターキーを4回押すとログインする操作も、従来の電子カルテと同じ。カルテの記事入力、処方せん・注射せん、その他各種オーダー操作など、すべて電子カルテと同じオペレーションができる。

処方オーダーは薬剤名の頭3文字を入力すれば薬剤マスターから検索・一覧できるし、注射オーダーでは電子カルテ停止直前までのオーダーデータを保持しているためDoオーダーも可能。入院患者の移動オーダーは、転棟指示するとオーダー履歴が病棟マップ情報に反映されて更新されるなど、細かな点にでも電子カルテと同じ動きをする。

電子カルテ停止時システムのカルテ記載画面。第5次システムの電子カルテとほぼ同じ見た目と操作感を実現した
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 「電子カルテ停止時システムの運用では、利用者に対する操作講習会は一切行いませんでした。通常利用している電子カルテと見た目も操作感も同じにすれば、業務が滞ることはないと考えたからです」(吉田氏)。電子カルテ運用と異なる点は、入院患者の処方オーダーの際に紙の処方せんを印刷して転送したこと、開発時間がなかったため放射線オーダーの紙伝票形式での運用を行ったこと、この2点だけだという。