大久保病院は、都立病院時代の2003年10月から医薬品情報管理システムを整備して機能を強化してきている。パソコン用の市販データベースソフトを利用した従来の医薬品データベースから、院内イントラネット経由で誰でも利用可能な医薬品情報管理システムへ移行した。薬剤科DI担当者の管理業務を効率化させるとともに、薬剤師独自の情報を含めた医薬品情報の共有によって医療スタッフ全体での有効活用が進んでいる。
DI担当者2人が毎月40時間を費やして医薬品集を更新
都立病院を経て、東京都保健医療公社の管轄となった大久保病院は明治12年に開院し、130年の歴史を持つ。新宿区西部二次保健医療圏における中核病院として、近隣区内の医療機関と積極的に連携を図りつつ、地域住民に適切な医療を提供することを基本方針に掲げている。1993年に現在の建物になってからオーダリングシステムを導入、経営基盤の確立を目指して1年半後の電子カルテ導入準備などに取り組んでいる。
DI(医薬品情報提供)業務についても、信頼できる的確な医薬品情報を一元的に提供するため、業務効率の向上を目的に早くからDI情報の電子化に取り組んできた。しかし、オーダリングシステムの医薬品マスターは情報更新に際して外部の運用センターに依頼して行う必要があり、大久保病院独自の院内医薬品集を管理するために作成したパソコンのデータベースソフトと連動させることができなかったため、医薬品集と医薬品マスターの更新作業をそれぞれ別にやり直さなければならないという課題を抱えていた。

市販のソフトウェアを使った医薬品データベースを構築した当初は、原稿をパソコンで作成して印刷会社に印刷・製本を依頼して採用医薬品集を発行していたが、最低部数が200部で、1冊2000円弱のコストがかかっていたため、その費用も大きかった。
「約1000アイテムの採用医薬品集の更新は、毎月の追補版作成、年1回の追補版の小冊子作成、数年に1回の全面改訂というペースで実施していました。パソコンを使った編集と医薬品マスターの更新作業にはDI担当者のうち2人が、月末の1週間~10日を毎日4時間程度かけて行っており、通常のDI業務の中で大きな負担になっていました。印刷・製品の外注費が高いので、ここ数年は簡易印刷機を使って自分たちで印刷と製本を行ってきましたが、その作業も大変なものでした」。薬剤科次席の廣井順子氏は、採用医薬品集作成・更新にかかわる課題をこう述べる。