ケアミックスに対応したシステムを検討

「もともと工学部を経た後に医師をめざしたこともあり、コンピュータやITには関心は高かった。医療のIT化は時代の要請の中で浸透しつつあり、いずれは取り組まなければと考えていたが、移転・新築がタイミングとしてはベストだろうと。幸い勤務医だった2人の息子も新病院に参画することになり、私以上にIT化に積極的な考えを持っていた彼らが牽引する形で導入に踏み切りました」(澤井博司氏)と、導入の経緯を語る。ただ、理事長は、電子カルテは大きな投資の割に効果を導き出せていないという他病院の事情も認識しており、導入に際してコストバランスを重視したという。
一方、実際の導入・検討の中心的な役割を果たした副院長の澤井崇博氏は、移転・新築に伴う投資コストを考慮し、当初はオーダリングシステムまでの導入を検討したという。「いずれは電子カルテを……と考えていたので、2段階で進めるとなると初期コストは抑えられても、導入にかかわる労力は結局のところ2倍以上になるでしょう。規模を拡大してからの中途導入は、より作業が大変になることに加え、スタッフの多くが新規採用になる移転のタイミングで電子カルテを含む現場のIT化を一気に進めることが望ましい、という結論に達しました」と回想する。
同病院は、特色で述べたように、一般医療に加えて介護療養も併せ持つケアミックス病院へ移行した。そのためシステムに求めた要件は、医療と介護に対応した各種保険が同時に扱え、患者情報を一元的に管理できることだった。

「大手医療情報システムベンダーも含めてさまざまなシステムを検討しましたが、いずれも介護向けシステムは別システムであり、電子カルテを中心とした一般的な医療保険対応システムと連携するのが容易でなかったことに課題がありました。その中でワイズマンのシステムは、両方に対応できる唯一のソリューションだった点が採用の理由の1つでした。保険情報を並行して使えて、操作においては医療と介護を意識して使い分ける必要がないことを評価しました」(澤井崇博氏)と、選定の理由を説明する。
同病院が導入したシステムは、ワイズマンの「電子カルテシステムER」を中心に、「病棟看護支援システムER」、「リハビリ管理システム」、「メディカル介護システム」、「医療事務管理システム」だ。ワイズマンのそれぞれのシステムは独立して運用でき、なおかつ患者基本情報を含めて各システムが連携しているため、医療保険病床と介護保険病床間を患者が移動しても一元的な管理ができる。
ケアミックスに対応していることがワイズマンの医療システムを採用した最大の理由であるが、加えて導入コストが他社と比較して大きな開きがあったことも大きな理由だという。新築費用に加えて、モダリティをはじめとする医療機器の多くが新規導入だったこともあり、医療情報システムへの投資額も自ずと抑制意識が高くなるのは経営的視点からすれば当然だ。

「ワイズマンのメディカル介護システムは機能がしっかりしている反面、電子カルテは機能不足な部分もありましたが、運用で十分にカバーできる範疇だと判断しました。導入コストが、大手ベンダーと比べて一桁近い差があったことが決定を左右しました」(澤井崇博氏)。
ワイズマンの医療・介護向けシステムは、介護老人保険施設では全国で42.5%のシェアを持ち、さらに居宅介護支援事業者には5000を超える導入実績があるが、オーダリングを含む電子カルテシステムの導入実績は100例に満たない。価格に大きな差があったとはいえ、機能性や信頼性において電子カルテの実績が少ないベンダーの製品を採用することに不安はなかったのか――。
「大手ベンダーのシステムは機能こそ十分なのでしょうが、病院規模等を考えると必要以上の機能もあるので、複雑すぎるという懸念がありました。確かにワイズマンのシステムはオーダープロセスで実際の現場にそぐわない仕様もあったり、細かな部分で機能が不十分であったりしましたが、バージョンアップの中で要望を取り入れて機能追加や改善を行うことを強調していたので、柔軟な対応姿勢に期待しました」(澤井崇博氏)と語る。