小山市民病院 薬局は、2002年10月のオーダリングシステム導入時から、付属する医薬品情報ツールを使用していたが、使い勝手の悪さや機能の低さから、2007年10月、新たに医薬品情報統合システムを導入。さまざまな工夫でシステムの機能を活用し、本来の機能である医薬品情報管理だけでなく、薬剤師の業務の効率化、あるいは服薬指導における安全性管理の支援などに役立てている。
医薬品情報活動の効率性・効果の向上を目指してシステムを刷新

「『薬は“毒”だと思ってください』。極端な言い方ですが、これは化学物質である薬には毒性があり、そこに情報が加わって適正使用ができて初めて効果があることを患者さんに伝えるために言い続けてきた言葉です。ですから、その医薬品情報の管理と提供は、薬剤師にとって調剤業務と並んで重要な業務だと考えています」。小山市民病院薬局長の角田芳江氏は、患者に対する服薬指導や医師に対する正確な医薬品情報提供の重要性について、一貫した考えをこう述べる。
同病院の薬局では、院内処方だった時代から患者に正しい服薬情報を提供するために、「おくすり百科」というパンフレットを作成してきた。内容は、小児への薬の飲ませ方や使い方を中心としたもので、多数のパンフレットを配布することで、薬の正しい知識を提供していた。また、医師や看護師など医療スタッフに対しては、月1回の頻度で作成・配布する紙媒体の「DIニュース」で医薬品安全性情報および各メーカーからの情報を重大な副作用を中心に提供していた。季節によって需要の高まる医薬品に関する情報などを適宜、編纂しながら、情報を流してきた。
「薬剤師が情報を発信しないと適正な服薬は保てないと考えています。患者さんに処方された薬の正しい情報を伝える服薬指導はもとより、副作用や併用禁忌などの正確な医薬品情報を先生方に適宜提供するために、病棟業務、医薬品情報活動は薬剤師がローテーションを組んで業務の割り振りをしています」(角田氏)という。
こうした医薬品情報活動をより効率的・効果的にするために、紙ベースの情報提供とは別にオンラインで、よりタイムリーに情報を提供しようと医薬品情報システムの構築を検討した結果、2007年10月に日本ユースウェアシステムの「JUS D.I.」を導入した。

それまでは、2002年に導入したオーダリングシステムに標準で付属する医薬品情報機能を利用していた。ところが、検索機能はないに等しく、操作性・閲覧性も非常に悪く、また情報の質や量も貧弱であったことから、薬剤師はもちろん、大半の医師も利用していなかった。利用されないがために情報の更新もなされておらず、現実的には役に立たない医薬品情報ツールとなっていた。
「収録されている情報は医薬品の添付文書程度の内容でしたが、添付文書がそのままテキスト形式で表示されているため、用法・用量や副作用など閲覧したい項目まで画面をいちいちスクロールさせないとたどり着けないものでした。そうした操作性の悪さから診療現場ではほとんど利用されず、オーダリング画面に機能を呼び出すボタンがあることさえ知らない人も多かったのです」。DI業務を担当する薬剤師の眞原達男氏は、利用されないツールの実態をこう振り返る。薬局では、鮮度の高い医薬品情報を使いやすいシステムで提供することが大きな課題であり、解決するための高機能なシステム導入が急務となっていた。