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業務改革を先導してTo-beモデルに沿ってシステム構築を実施

 医療サービスの向上、医療収益の向上、経営の改善といったシステム化の目的において最大の導入効果を得るためには、一般的には従来業務をそのままシステム化すること事態に無理があることが多く、業務改善や業務フローの変更を行うことが必然となる。その実現にはシステム化と同時に業務改革を進める(あるいはシステムのパッケージに業務を合わせる)、システム化の前に業務改革を推進するという2つの手法がある。佐倉病院は、システム稼働の期限とコスト制限のある中で、より高い導入効果を得るために後者の手法を選択した。

部門を超えたワーキンググループで業務の見直し・安全管理も視野に入れた改善策を検討したという
部門を超えたワーキンググループで業務の見直し・安全管理も視野に入れた改善策を検討したという

 「さまざまな議論を重ねましたが、システムに業務を合わせるのでなく、まず業務を見直して、患者さんのためにどうあるべきかをベースに理想的な業務プロセスを描き、それをシステムに落とし込むという道を選択しました。病院スタッフは業務を変えること、システム化することに抵抗があるもの。業務のあるべき姿を自ら議論してシステム化する方が抵抗感がなく要望の中から必要なものだけを切り分けられると考えたからです。もちろん、パッケージソフトのカスタマイズ範囲が大きくなればコストは膨れあがるだけですから、できる限り理想の業務フローに近づけられるよう、現実的にはパッケージの機能との折衷案になりますが、スタッフが納得のできるシステム構築ができると判断しました」(鈴木氏)。

 システム構築プロジェクトでは、部門を超えたワーキンググループで業務の見直し・安全管理も視野に入れた改善策を検討するとともに、噴出した課題をトータルに解決するための諸問題解決特別班を組織し、オーダリングシステム準備室が中核となって進めたという。痛みを伴う業務改革では多くの問題が噴出してプロジェクトは困難を極めたというが、一貫したことは費用対効果の高いもの、実効性のあるものをシステム化していくこと、患者と利用者にとってメリットがあり、利用しやすい環境を最大限重視して進められたことだろう。

効率的な診察を実現するためのオーダーシートセットの構築

 佐倉病院の電子カルテ・オーダリングシステムは、各社の提案の中からIBMのCIS-MR(Medical Record)およびCIS-Orderが選定された。同社のソリューションが選ばれた背景には、医事会計システムがIBM社のシステムで構築されていたことや大森病院・大橋病院とも同社が構築してきた経緯があり、東邦大学医療センターとして三病院の経営情報を統括する際にメリットがあるからだ。とはいえ、鈴木氏は業務プロセスのTo-beモデルの実現にIBMの提案が、開発費も含めて導入コストや他病院での導入事例を踏まえ、当院の事情や医療情勢の認識度合いが他社を圧倒していたというのが最大の理由だと強調する。

端末認証と指紋認証でセキュリティを確保している
端末認証と指紋認証でセキュリティを確保している

 佐倉病院の構築した医療情報システムにはいくつか大きな特徴がある。その1つが利用者(特に医師)の操作負担を軽減するオーダーシートセット機能だ。オーダーごとのセット化やクリニカルパス導入による効果は大きいが、さらに一歩前進させたものだ。医師が実際に診療するときには患者の問診・診察から鑑別診断検査オーダーを実施し、結果確認から絞り込み検査オーダーあるいは診断結果に基づいた治療がなされるというパターンに着目。「それぞれ一連の流れの中に根拠に基づく医療、病態ごとのガイドラインや医師個人の中でセット化されたクリニカルパスが確立されている」(鈴木氏)とし、オーダーごとの繰返し操作から医療行為の根拠をひとまとめにしてオーダーする仕組みを目指している。こうした疾患群(または疑い)に基づいたオーダーシートのグループ化により、1つひとつ入力しなくてもオーダーメニューから選ぶことが可能になり、医師のシステム入力作業が軽減され患者と向き合う時間を取れる。不要なオーダーの発生やオーダー漏れを軽減することができ、クリニカルパスと同様、主治医以外にも一連の医療行為が一目で分かるようになるといった効果があるという。

 セキュリティも仕組みと運用で強化した。システムへのログインには端末認証と指紋認証を採用し、アクセスの安全性を強化するとともにログの監視を強化して診療に関係のないカルテ閲覧の防止を図っている。また、検査データや診断画像などを端末のパソコンでローカル保存できない設定とした。「学会発表用資料の作成においても、データが必要な際には申請書を提出し、情報管理課でデータを渡して利用者側で個人を特定できないよう加工しています。情報漏洩等を防ぐため利便性を犠牲にしていますが、以前と比較すれば必要なデジタル化されたデータがカンファレンス等でも利用され、医師の手を煩わせることなく、十分に提供できる環境になっています」(鈴木氏)。